Navigation>>九州沖縄農業研究センター >> 研究成果情報 >> 平成19年度目次

我が国におけるCurvuralia lunataによるサトウキビ斑点病(新称)の初発生


[要約]
2005年6月、鹿児島県大島郡天城町のサトウキビメリクロン苗供給施設で発生したメリクロン苗の葉に赤褐色斑点が生じる病害は、形態学的、分子分類学的見地などからC.lunataによるものと診断同定された。本菌によるサトウキビの病害の発生は初めての報告であり、病名を「サトウキビ斑点病」とする。

[キーワード]
サトウキビ、メリクロン苗、Curvuralia lunata、新病害

[担当]
鹿児島県農業開発総合センター大島支場・病害虫研究室

[代表連絡先]電話0997-52-3545	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]研究・参考	

[背景・ねらい]
2005年6月に、鹿児島県大島郡天城町のサトウキビメリクロン苗供給施設でサトウキビ(KY96-189)メリクロン苗の葉身に赤褐色斑点症状を示す病害が発生した。
本症状発生の原因を明らかにするため、病原菌を同定した。
[成果の内容・特徴]
  1. 本症状は、サトウキビの葉身に赤褐色紡錘形の病斑を多数生じ、その後、病斑部は枯死し、葉先の枯れ込みがみられた(図1)。メリクロン苗では赤褐色斑点が激しく見られたが、枯死には至らなかった。

  2. 病斑部からは高率に同一の糸状菌が分離され、分離菌を戻し接種した結果、原病徴が再現され、同菌が再分離された。

  3. 分離菌の形態的特徴は、Curvularia lunata(Sivanesan、1987)とほぼ一致した(表1)。

  4. 菌叢生育は15℃から38℃で認められ、適温は30℃であった(図3)。また、分生胞子の発芽は10℃から38℃で認められ、適温は35℃であった(図4)。

  5. (独)花き研究所の月星隆雄氏により、rDNA-ITS領域の塩基配列は、DDBJ登録C.lunata(=Cochliobolus lunatus)AF071339と99.8%一致した(データ省略)。分離株のDNA-ITS領域は、アクセッション番号AB292481としてDDBJに登録した。

  6. 単胞子分離した菌株をサトウキビ系統KY96-189、品種NiN2、NiF8、F177に噴霧接種した結果、いずれの品種・系統でも接種48時間後に葉身に微小な赤〜紫褐色斑点が認められた(データ省略)。約2週間後には病斑部や葉縁部及び葉先が枯死し、罹病組織からは分離株と同一の菌が再分離された。

[成果の活用面・留意点]
  1. 分離菌をCurvuralia lunataと同定した。

  2. 病名を日本植物病理学会病名委員会に申請中。

  3. 本症状は、眼点病、赤腐病、輪斑病及び葉焼病などの斑点性病害と区別が困難であるので診断の際は留意する 。

[具体的データ]

図1  サトウキビ(KY96-189)のメリクロン苗に生じた病斑


図2 分離株の分生子柄及び分生胞子の形態(スケールは20μm)


表1 分離株とCurvularia lunataの形態比較


図3 分離株のPDA培地上での生育と温度の関係


図4 分離株のPDA培地上での24時間後の分生胞子発芽と温度の関係

[その他]
研究課題名:サトウキビ病害虫防除技術確立試験
予算区分 :県単
研究期間 :2005〜2006年度


目次へ戻る