フタテンチビヨコバイの周年発生生態と寄主植物
- [要約]
- フタテンチビヨコバイは、九州中部では7月下旬から密度が増加し、9月に発生ピークを迎える。本種は夏期から秋期にかけてはオヒシバやメヒシバ等のイネ科植物上で増殖し、冬期は主にササで成虫越冬する。
- [キーワード]
- フタテンチビヨコバイ、飼料用トウモロコシ、ワラビー萎縮症、発生生態
- [担当]
- 九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
[代表連絡先]電話096-242-7732
[区分]九州沖縄農業・病害虫
[分類]研究・参考
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[背景・ねらい]
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2001年以降、九州中部の飼料用夏播きトウモロコシでワラビー萎縮症が発生している。本症状はフタテンチビヨコバイの吸汁によって発症するため、被害の抑制には本種の防除が不可欠である。しかし、これまで本種に関する研究事例は少なく、その国内での生態はほとんど知られていない。そこでフタテンチビヨコバイの防除技術開発のための基礎データとして、本種の周年発生生態および寄主植物を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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フタテンチビヨコバイ成虫は、発生ピークが不明瞭な年を除くと、イネ科植物群落内で7月下旬から密度が増加し、9月中に発生ピークを迎える(図1)。幼虫の発生ピーク時期は年次間で変動するが、7〜10月に発生が多い(データ略)。
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成虫の発生量は、2004・2005年が多く、2006年が少ない(図1)。これは各年のワラビー萎縮症被害発生量と一致する。
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7〜11月には、イネ科植物の中では、オヒシバやメヒシバ、エノコログサ上で多数のフタテンチビヨコバイ成虫・幼虫が確認される(図2)。このことから、本種は夏期にはこれらの植物上で増殖している。
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12月〜翌年2月までの冬期には、コムギやイタリアンライグラスよりも、トウモロコシ圃場に隣接するササで多くの成虫が確認される(図3)。このことから、フタテンチビヨコバイは冬期ササを主体とするイネ科植物上で成虫越冬する。
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5月下旬にはコムギ上で幼虫が確認されることから(図3)、フタテンチビヨコバイは春期はコムギ上で増殖する。
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[成果の活用面・留意点]
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フタテンチビヨコバイに対する防除技術開発のための基礎的知見となる。
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フタテンチビヨコバイの密度はイネ科植物群落内で7月下旬以降に増加するので、その被害軽減のためには、夏播きトウモロコシを播種適期(7月下旬〜8月中旬)のなるべく早い時期に播種する。
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[具体的データ]
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図1 未舗装農道上または両脇のイネ科植物群落内でのフタテンチビヨコバイ成虫密度(2004〜2007年、熊本県菊池市旭志)

図2 7〜11月までの植物別のフタテンチビヨコバイ(a)成虫および(b)幼虫密度(2006年、熊本県菊池市旭志)

図3 12〜5月までの植物別のフタテンチビヨコバイ成虫(上段)、および幼虫(下段)
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[その他]
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研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
課題ID:214-h
予算区分 :基盤、えさプロ、交付金
研究期間 :2004〜2007年度
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