イチゴ苗における潮風害の被害再現と散水による被害軽減
- [要約]
- イチゴの定植時期に潮風害に遭遇した苗は、NaCl濃度が濃いほど、定植後の展開葉が小さく、果実が小玉化し、減収する。しかし、散水時間が早いほどその程度は軽減できる。
- [キーワード]
- イチゴ、定植時期、潮風害、苗、散水、NaCl濃度
- [担当]
- 佐賀農業セ・土壌環境部・土壌・肥料研究担当
[代表連絡先]電話0952-45-2141
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考
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[背景・ねらい]
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平成18年9月16日に上陸した大型台風13号は、最大瞬間風速50m/sの強風であったが、降雨をほとんど伴わず、しかも南風が強く、有明海の満潮時と重なったことから、有明海沿岸の定植時期を迎えていたイチゴに多大な潮風害をもたらした。潮風害やその対策に関する知見はイチゴではほとんどないことから、対応に苦慮したところである。そこで、定植前のイチゴ苗を用い、手もみすることで葉に傷を付け、NaCl水溶液処理により潮風害を再現し、生育・収量に及ぼす影響と、処理後の散水による被害軽減効果について検討した。
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[成果の内容・特徴]
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イチゴの茎葉中に吸収されたNaCl濃度は、どの濃度においても6時間後まではほぼ一定であり、12時間以降高くなる(図1)。
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付着したNaCl濃度が高いほど葉の枯死割合は高くなるが、定植後、株が枯死することはない(データ略)。また、定植後は付着したNaCl濃度が高いものほど出葉数や花数が少ない(表1)。
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定植後展開した葉の大きさは付着したNaCl濃度が高いほど小さい。また、収量は付着したNaCl濃度が高いほど1果重が軽く、低下する(図3,図4)。
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イチゴ苗に50ml/株程度の散水を行うことで、茎葉に付着したNaClの割合を約30%程度に低下できる(図2)。
- 散水が遅くなるほど生育は抑制され、展開葉は小さくなるが、散水が早いとその程度は軽減でき、海岸から約5km地点でのNaCl付着量の0.3mg/cm2程度では、ほぼ5%処理に相当することから、6時間以内の散水は効果が高い(図3)。
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散水が遅いほど小玉化し、減収割合は大きいが、散水が早いとその程度は軽減できる(図4)。
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[成果の活用面・留意点]
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定植時期のイチゴ苗に対する潮風害被害軽減対策の参考とする。
- 今回の台風で海岸から約5km地点でのNaCl付着量は0.3mg/cm2程度であった。
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品種「さがほのか」、10.5cmポット苗での結果である。
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NaCl水溶液の濃度は2.5%、5%、10%とし、霧吹きで20回(18ml/株)噴霧した。
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[具体的データ]
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表1 NaCl処理量と葉数、花数、出蕾始め日、収穫始め日

図1 イチゴ茎葉中のNaCl濃度(乾物)

図2 散水処理とNaCl付着割合

図3 NaCl処理後展開した葉の大きさ(11月13日調査)

図4 散水処理後の収量及び1果重
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[その他]
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研究課題名:魅力あるイチゴづくりをめざした「さがほのか」の効率的な計画生産・出荷技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2006〜2009年度
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