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牛ふん堆肥を用いたアールスメロン栽培において土壌養分を集積させない養分管理のための圃場カルテ


[要約]
作付前土壌および牛ふん堆肥の加里含量から土壌診断基準値以下になるように堆肥施用量を決定し、堆肥、土壌の可給態窒素および無機態窒素から施肥窒素量を求める圃場カルテを用いる施肥は、同一圃場で牛ふん堆肥を用いるアールスメロンの連作を可能にする養分管理法である。

[キーワード]
牛ふん堆肥、アールスメロン、診断基準、加里、窒素

[担当]
熊本県農業研究センター・生産環境研究所・土壌肥料研究室

[代表連絡先]電話096-248-6447	
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)	
[分類]技術・参考	

[背景・ねらい]
熊本県では消費者のニーズに応えるため、堆肥等有機物資材に養分供給を依存した減化学肥料の取り組みが急増している。そこで、県産野菜の主力品目で、同一圃場での連作が慣行として行われるアールスメロンに対して、牛ふん堆肥の施用を基本とし、化学肥料を無駄に施肥しない野菜生産のための養分管理技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
  1. 圃場カルテによる養分管理は、前作からの土壌残存養分量に加えて、施用する堆肥由来養分量ならびに生育期間中に発現する可給態窒素量を診断し、施肥基準を基に施肥設計する方法である(図1)。

  2. 同一圃場でのアールスメロンの連続栽培において、加里に対する土壌診断基準値(90mg/100g乾土)を上限として牛ふんたい肥を2t/10aまで施用し、堆肥由来養分、土壌の残存養分および可給態窒素を診断する。そのときの10a当たりの窒素投入量は、化学肥料あるいは有機質肥料と牛ふん堆肥を組み合わせた慣行施肥体系よりも2.4kg、リン酸は2.9kg、加里は11.6kg削減することができる(表1)。

  3. 圃場カルテに基づいて施肥基準から減肥して栽培したアールスメロンの一果重、果実糖度ならびにネットの形成は作型によらず牛ふん堆肥2t/10aに化学肥料あるいは有機質肥料を上乗せ施用する慣行施肥体系と同等である(図2)。また、栽培跡地土壌に残存する無機態窒素や交換性加里は連作によっても慣行施肥より増加しない(表1)。

  4. 以上の結果から、同一圃場におけるアールスメロンの連作において、土壌と堆肥に由来する養分供給量と施肥基準に基づいて施肥法を決められる圃場カルテは土壌中に養分を集積させない養分管理技術として有効である。

[成果の活用面・留意点]
  1. この技術は黒ボク畑土壌で行われるアールスメロンの春夏作、秋冬作に適用できる。

  2. 土壌の無機態窒素および可給態窒素は反射式光度計(商品名:RQフレックス)による簡易診断法が考案されており、生産現場での測定が可能である。また、堆肥の成分組成は特殊肥料として表示されている分析値を利用する。

  3. 圃場カルテによる施肥では加里を含まない有機率100%の有機配合肥料を用いる。なお、水管理や栽培管理は従来のアールスメロンに対する作型別栽培マニュアルに準じる。

[具体的データ]

図1 圃場カルテによる診断と施肥の進め方


図2 圃場カルテにより栽培されたアールメロンの果実品質


表1 圃場カルテによる平均養分投入量と栽培跡地土壌の化学性

[その他]
研究課題名:「安全・安心な」農作物生産のための総合的な養分管理技術の開発
予算区分 :県単独事業
研究期間 :2004〜2007年


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