土壌水分や土性の違いが主要な有機質肥料の窒素無機化に及ぼす影響
- [要約]
- 灰色低地土における有機質肥料(菜種油粕、豚肉骨粉、魚粕、魚エキス)の窒素無機化率に及ぼす土壌水分変動(pF1.2〜2.1)や土性(細粒質、中粗粒質)の影響は小さいが、中粗粒質に比べ細粒質では無機化が速く進む。
- [キーワード]
- 有機質肥料、窒素無機化、灰色低地土、土性、土壌水分、速度論的解析
- [担当]
- 佐賀農業セ・土壌環境部・土壌・肥料研究担当
[代表連絡先]電話0952-45-2141
[区分]九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]研究・参考
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[背景・ねらい]
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現在、イチゴを中心として施設栽培においては、施肥の大部分に有機質肥料が用いられている。施肥にあたっては、一般的な無機化率(化学肥料代替率)を基に施用されているが、栽培における地温の変化や土壌水分の変動、土壌の種類(土性の違い)による影響はあまり考慮されないのが現状である。有機質肥料は、化学肥料に比べると遅効性であり、環境条件(温度・水分等)に左右されやすくその肥効は不安定である。環境保全型の施肥技術を確立するためには、使用する有機質資材(堆肥・有機質肥料)や土壌からの窒素無機化パターンを考慮し、作物の窒素吸収に合った施肥設計が必要となる。そこで、灰色低地土における主要な有機質肥料の窒素無機化を速度論的解析により把握し、水分条件や土壌の種類(土性の違い)による影響を明らかにすることで、適正な施肥管理のための基礎知見を得る。
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[成果の内容・特徴]
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菜種油粕、豚肉骨粉、魚粕、魚エキスは、細粒灰色低地土では、単純型、単純並行型の無機化モデルへの適合度(AIC)はほぼ同程度であり、単純型モデルを用いその無機化特性値を明らかにした(表1)。
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また、設定した最大容水量の50〜60%、40〜50%の土壌水分は、それぞれpF1.2〜1.6、pF1.6〜2.1に相当するが、土壌水分の違いが無機化特性値に及ぼす影響は小さい(表1)。よって、栽培に伴う土壌水分の変動(pF1.2〜2.1)が肥料からの窒素無機化に及ぼす影響は小さい。
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一方、中粗粒灰色低地土では、菜種油粕、豚肉骨粉、魚粕、魚エキスは、単純型より単純並行型の無機化モデルに適合する(表2)。
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得られた無機化特性値を基に、イチゴ栽培に基肥として施用する場合の肥料からの窒素化を推定すると、魚エキスで80〜85%、豚肉骨粉で78%程度、菜種油粕で約70%、魚粕で約67%の窒素が供給される(図1、一部データ省略)。土性の違いによる最終的な窒素無機化率に差は無いが、中粗粒質に比べ細粒質で無機化が速く進み、窒素無機化パターンが異なる。
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[成果の活用面・留意点]
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灰色低地土壌に適応する。
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栽培期間の実測地温と無機化特性値をもとに供試肥料からの窒素無機化パターンを推定できる。
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得られた無機化特性値は、有機質肥料による環境保全型施肥技術確立のための施肥診断システム確立における基礎データとなる。
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粉砕した肥料での結果であり、ペレット化された肥料では無機化パターンが異なる場合があるので留意する。
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[具体的データ]
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表1 細粒灰色低地土における無機化特性値と土壌水分の影響

表2 灰色低地土における土性の違いと無機化特性値

図1 灰色低地土における土性の違いと肥料からの窒素無機化パターン
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[その他]
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研究課題名:施設野菜における有機質資材からの窒素供給パターン推定による環境保全型施肥技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2005〜2008年度
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