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青果用サツマイモ「ベニサツマ」の食味(甘さ)に及ぼす増肥の効果


[要約]
いものβ−アミラーゼ活性が高いとマルトース含量が増加し、食味(甘さ)が向上する。施肥量が増加するとβ−アミラーゼ活性は高まる。また、生いものでん粉含量が高いと蒸しいものマルトース含量が増加する。

[キーワード]
サツマイモ、β−アミラーゼ活性、マルトース含量、食味、でん粉含量

[担当]
鹿児島農加セ・加工開発研究室
[代表連絡先]電話099-245-1138
[区分]九州沖縄農業・流通加工、畑作      
[分類]技術・参考       

[背景・ねらい]
「ベニサツマ」は鹿児島県の青果用サツマイモの主要品種で、これまでの外観品質に加え、近年良食味へのニーズが高まっている。いものおいしさ(食味)には、甘さ、うまみ、食感、香りなど多くの要因が関与しているが、外観品質に関する試験に比べて食味に関する試験の事例は少ない。 そこで、食味に関与する要因のうち、食味への影響が大きい「甘さ」に関与する要因をいもの内容成分と施肥量から解析する。

[成果の内容・特徴]
  1. 生いものβ-アミラーゼ活性が高いほど蒸しいものマルトース含量が増加する。しかし、β-アミラーゼ活性がおおむね1,000〜1,500units/ml以上ではマルトース含量の増加は小さく、マルトース含量への影響は小さくなる(図1)。

  2. 生いものでん粉含量が高いほど蒸しいものマルトース含量が増加する(図2)。

  3. β-アミラーゼ活性は施肥量が多いほど高くなる。また、同じ施肥量でも土壌の種類など栽培条件により、β-アミラーゼ活性の差が大きい。マルトース含量に影響を及ぼすβ-アミラーゼ活性から推察される食味向上のための施肥量は、黒ボク土では窒素0.4〜0.8kg/a、地力の低い黒ボク+赤ホヤ混層土では窒素0.8kg/a程度である(図3)。

  4. 生いものでん粉含量と施肥量との関係は、黒ボク土壌では判然としないが、地力の低い黒ボク+赤ホヤ混層土壌では施肥量の増加に伴いでん粉含量は増加する。でん粉含量は、土壌の種類別では、黒ボク土壌が黒ボク+赤ホヤ混層土壌より高い(図3)。

  5. 施肥増により、いものβ-アミラーゼ活性が高まり、マルトース含量が増加し、いもが甘くなる。特に、地力の低い土壌では、増肥により、β-アミラーゼ活性が高まるだけでなく、でん粉含量が増加することから、食味(甘さ)が向上する(図4)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、鹿児島県のベニサツマに対する標準施肥量を、食味向上の観点から見直す場合の参考として活用できる。

  2. ベニサツマの食味向上には、多施肥が有効であるが、その際は、土壌の種類や前作などで異なるほ場の窒素レベルに注意する。

[具体的データ]

図1 蒸しいものβ-アミラーゼ活性とマルトース含量との関係


図2 生いものでん粉含量と蒸しいものマルトース含量との関係


図3 土壌の種類・施肥窒素量とβ-アミラーゼ活性,生いものでん粉含量との関係


図4 施肥量の増加による食味向上(模式図)

[その他]
研究課題名:青果用サツマイモの良食味・高品質安定生産技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2002〜2006年度


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