2.干ばつ害対策

大豆作付予定の圃場における乾燥害対策

乾燥ストレスの診断と対策技術の考え方

水田で作る大豆は、湿害が問題となることが多いですが、最近の極端な気象条件から乾燥ストレスについても注意が必要です。

乾燥ストレスが生じやすい時期は大まかに言えば出芽前後と開花期以降です。

しかし、正確な時期や、ストレスの度合いは年次や地域によって様々に異なります。

まずは乾燥害のリスクを把握しましょう。

作土の保水性と乾燥の影響について

土の中には、排水に役立つ孔と保水(作物が吸える水を貯めておける)孔があります。

根が伸びる範囲(水田だと主に作土)に水を貯めておける孔が多いと多収になる傾向があります。

耕深を深くすると根が伸びる範囲が広くなり、保水の孔も多くなります。

①初期の乾燥害の評価

初期に乾燥害を受けると、出芽が揃いませんし、その後の大雨で減収するリスクが高くなります。

播種後しばらく(1~2週間)ほとんど雨がないことが多いですか?

その後は大雨*が降ることが多いですか?

(*)ここでいう大雨とは作土の深さ(mm)の半分以上の降水量です。

作土の深さは、地表面から棒を挿して、こつんとあたるところまでの深さと考えてください。

対策1

播種技術による初期の乾燥害軽減を検討してみましょう。

・排水対策をしっかりすると、地表近くの乾燥が早く始まります。播種の時に浅耕にすると、直前には起こさない少し下の層には水があり極度の乾燥を回避できます(下の写真)

左のアップカットロータリーによる浅耕播種では無降雨が続いてもストレスを受けていません。

一方、右のダウンカットロータリーによる普通耕播種は、日中葉が閉じた状態になっています。

・根がスムーズに水のある下層に伸びることが大切です。スリット成形播種機2)は、粘土質の土壌で高い効果を発揮します。

対策2

下層に伸びた根が水没しにくいように大雨に備えた排水対策を行いましょう。

・作土を厚くすると、雨を受け入れる土の容量が大きくなります。1cm深くすれば、降雨5mm分程度増えます。

チゼルによる深耕3)のように作土の下を少し緩くして、より下層に水を送る方法もあります。

②子実肥大期ごろの乾燥害の評価

開花期前後にはダイズが地面を完全に覆い、必要な水の量が最大となります。

この時期に強い乾燥ストレスを受けると、乾物重の低下や葉色が淡い、葉が小さい等の症状が出ます。

左:正常なダイズ、右;強い乾燥ストレスを受けたダイズ

また、一時的なストレスでは晴天時の日中に葉が裏返るという症状が出ます。

左:正常なダイズ、右;一時的な乾燥ストレスを受け、葉が裏返ったたダイズ

この時期の乾燥ストレスは、予め耕深を深くとることで緩和できます。また、根群域を深くするスリット成形播種2)、畝間灌水も有効な技術です。

畝間灌水は湿害を招く恐れがあるので、排水対策4)と合わせて行うことが必須となる技術です。排水対策4)は作付け前に行うため、乾燥ストレスのリスクをこの時期にまでに評価しておくことが重要です。

目次から他の対策も確認してみましょう。

脚注

1)アップカットロータリーで安定した浅耕を行う技術は乾燥ストレスを軽減する効果が認められておりますが、また作業速度を上げることが可能な播種技術です。こちらも参考にしてください。
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2)スリット成形播種機は、大豆直根の伸長を誘導し、大豆生育期の干ばつ害を軽減する効果が期待できます。 詳細はこちらへ
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3)チゼルによる深耕は根域を拡大するとともに土壌水分変化の緩衝能力を大きくすることができます。 関連情報の詳細はこちらへ
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4)潅水を行うためには排水対策が必須です。排水対策については、こちらを参考にして下さい。
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目次から他の対策も確認してみましょう。