6.雑草害対策

大豆作付予定の圃場における雑草害対策

「大豆を健全に生育させること」が雑草防除の必要条件です。 大豆の生育が不良で、大豆による雑草抑制効果が発揮できないと、雑草が繁茂してしまう大きな要因になります。一方で、大豆の安定多収には適切な雑草対策が不可欠です。地域や作付体系によって問題となる雑草が違い、雑草の種類によって除草剤に対する反応が異なります 1)

問題雑草の種類と問題になっている要因を判断し、 適切な対策を講じましょう2)

①前作大豆の生育状況はどうでしたか?

良好
他の対策を優先しましょう。

項目別の目次へ

大豆の生育が良好で、雑草が繁茂している場合は、防除体系を見直す必要があります。

雑草の防除体系の基本は、

  1. 大豆の播種前の防除4)
  2. 大豆の播種後の土壌処理剤による防除
  3. 大豆生育期前半の中耕(培土)および茎葉処理剤による防除
が基本となります。

②問題雑草の種類は主にイネ科雑草ですか、広葉雑草ですか?

イネ科雑草

例) イヌビエ

イネのように葉の幅が狭い

③イネ科雑草の対策へ

広葉雑草

例) オオイヌタデ

葉の幅が広い

③イネ科雑草の残草要因と防除対策

イネ科雑草は多発すると減収をもたらします。 イヌビエ等は水稲作でも問題になるので、しっかりと防除しましょう。

収量・収穫作業への影響がありましたか?

なかった
あった

③-1へ

水稲との輪作体系ですか?大豆の連作ですか?

大豆の連作5)
*イネ科雑草の対策を強化したい場合もこちら

水稲との輪作
従来の防除体系を継続しましょう。

④広葉雑草の診断へ

以下のフローチャートを参考にして、今までの防除体系をチェックしてみましょう。

③-1:大豆の播種前にイネ科雑草が発生していましたか?

はい
いいえ

③-2へ

大豆播種前にていねいな耕うんで雑草をしっかり土壌中に埋め込みましょう。 雑草が十分に埋め込めないと判断される場合は非選択性茎葉処理剤を散布して、枯らしましょう。

③-2:播種後に土壌処理剤を散布しましたか?

いいえ

播種後土壌処理剤を散布する体系にしましょう。 ラベルをよく読んで使用してください。

はい

イネ科雑草に効果がある成分を含んでいる土壌処理剤を選びましょう。

天候や条件によって効果が低下する場合もあります。 砕土率をあげ、適湿な条件で散布することが重要です。

天候等、条件により播種後土壌処理剤が散布できなかった場合は、 中耕培土、イネ科雑草対象茎葉処理剤を組み合わせた体系を実施しましょう。

播種後土壌処理剤の効果は2〜3週間ほどです。 その後に出芽した雑草に対してはさらに対策が必要です。

③-3:中耕(培土)は行いましたか?

いいえ

中耕は雑草防除上も有効な技術です。中耕の導入を検討してください。

はい

適期に実施しましょう。雑草が大きくなりすぎると効果が低下します。

狭畦栽培などの中耕ができない場合6)や効果が低い場合には、 イネ科雑草対象茎葉処理剤を散布しましょう。

③-4:大豆生育期にイネ科雑草対象の茎葉処理剤を散布しましたか?

いいえ

大豆生育期にイネ科雑草対象茎葉処理剤を散布する体系にしましょう。

  • ポルトフロアブル
  • ナブ乳剤
  • ワンサイドP乳剤
  • セレクト乳剤
  • ホーネスト乳剤
はい

ラベルの内容(処理時期、処理薬量など)を確認し、適切な条件で使用してください。ラベルの記載よりも生育が進んだ雑草には効果が低下します。

十分な効果が得られかった場合には、処理時期、処理薬量などの条件を見直してください。例えば、実際に生えている雑草のサイズがラベルの記載よりも大きい場合には、早めの処理が必要です。

④広葉雑草の診断(1):主要な難防除雑草

広葉雑草は多くの種類があります。 従来の防除体系では防除できない場合、 雑草の特性に合わせた防除体系を選ぶ必要があります。

下の写真の中に問題としている雑草はありますか?



1.帰化アサガオ類

つるが大豆に絡みつき、ラッパ状の花を付ける。本州以南全国に分布し、数種類ある。


2.アレチウリ

巻きひげを大豆に絡みつけ、トゲの多い果実をつける。主に東日本に分布。

3.ヒロハフウリンホオズキ

縁が細かく尖った薄い葉をつけ、花は薄黄色で、ほおずき状の袋に覆われた実をつける。関東以西に分布。

4.イヌホオズキ類

果実は黒色で汁気が多く、大豆の汚損粒の原因となる。 茎が紫色を帯びることが多い。ほぼ全国に分布。

5.カロライナツユクサ

一般的なツユクサとは別種で葉の幅が狭く、花は薄い青色。密生すると茎が大豆に寄りかかる。主に九州地方に分布。

以上の5つの雑草については 難防除雑草防除マニュアルを参考に対策をしてください。

以上の5つの雑草以外の場合は、次の⑤広葉雑草の診断(2)その他の雑草へ

⑤広葉雑草の診断(2)その他の雑草

今までの防除体系をチェックしてみましょう。

⑤-1:大豆の播種前に広葉雑草は発生していましたか?

はい
いいえ

⑤-2へ

大豆播種前にていねいな耕うんで雑草をしっかり土壌中に埋め込みましょう。 雑草が十分に埋め込めないと判断される場合は非選択性茎葉処理剤を散布して、枯らしましょう。

⑤-2:播種後に土壌処理剤を散布しましたか?

いいえ
播種後土壌処理剤を散布する体系にしましょう。 ラベルをよく読んで使用してください。
はい

広葉雑草に効果がある成分を含む土壌処理剤を選びましょう。

天候や条件によって効果が低下する場合もあります。 砕土率をあげ、適湿な条件で散布することが重要です。

天候等、条件により土壌処理剤が散布できない場合は、 大豆出芽揃期に散布するパワーガイザー液剤の使用や広葉雑草対象茎葉処理剤、 中耕を組み合わせた体系を実施しましょう。

播種後土壌処理剤の効果があっても、一部の雑草がその後も出芽してまん延することがあります。

⑤-3:中耕(培土)は行いましたか?

いいえ
中耕は雑草防除上も有効な技術です。中耕培土の導入を検討してください。
はい

適期に実施しましょう。雑草が大きくなりすぎると効果が低下します。

狭畦栽培などの中耕ができない場合6)や効果が低い場合には、 広葉雑草対象茎葉処理剤を散布しましょう。

⑤-4:大豆生育期に広葉雑草対象茎葉処理剤(大豆バサグラン液剤、アタックショット乳剤)を散布しましたか?

いいえ
大豆生育期に広葉雑草対象茎葉処理剤を散布する体系にしましょう。
はい

ラベルをよく読んで、適切な条件で使用してください。 雑草が大きくなりすぎると効果が低下します。

十分な効果が得られない場合には、処理時期、処理薬量などの条件を見直してください。

アタックショット乳剤の使用にあたっては、こちらを参考にしてください。

⑤-5:大豆生育期の広葉雑草対象の茎葉処理剤の効果

広葉雑草対象の茎葉処理剤は選択性があり、雑草の種類によって効果が異なります。

以下の写真で、問題としている雑草がどのグループにあてはまるか確認してみましょう。


グループ1:大豆バサグラン液剤の効果が高い主要な雑草


1.アメリカセンダングサ

茎は直立し、赤紫色。葉は深く完全に切れ込む。 開花は遅く9月以降で、果実にはトゲがあり、衣類などにくっつく


2.タデ類

葉は先が尖り、茎は基部で枝分れする。 白色〜淡紅色の小さな花が密集した穂をつける。 オオイヌタデ、ハルタデなどよく似た雑草がある。


3.オオオナモミ

葉は大型で、粗く切れ込む。茎は赤紫色を帯びる。茎上部にいがのある果実をつける。

これらの雑草に対して大豆バサグラン液剤だけでは防除不十分な場合は、 中耕あるいは非選択性除草剤の畦間・株間処理も導入した体系防除を実施しましょう。

大豆バサグランとイネ科除草剤の現地混用の適否については関連機関に確認してください。

グループ2:アタックショット乳剤の効果が高い雑草


1.シロザ

茎は直立し、みぞがある。 成熟した茎はかなり硬い。 若い葉の表面には白(まれに赤)の粉がつく。花は小さく目立たない。


2.ヒユ類

いくつか類似した雑草があるが、ホソアオゲイトウが全国的に最も多く、 茎が直立して大型になる。花は小さく目立たない。


3.イチビ

葉は大型でハート型、表面にビロード状の毛が密生し、手触りが良い。花は黄色。


4.エノキグサ

茎は赤みを帯び、直立して硬く、枝分れが多い。 葉の形がエノキ(榎)に似る。花は小さく目立たない。

これらの雑草に対してアタックショット乳剤だけでは防除不十分な場合は、 中耕あるいは非選択性除草剤の畦間・株間処理も導入した体系防除を実施しましょう。


グループ3:大豆バサグラン液剤、アタックショット乳剤ともに効果不十分な雑草


1.クサネム

植物体全体が白みを帯び、だ円形の小さな葉が並ぶ。花は淡黄色。莢は節で切れ、中に黒褐色の種子が一つある。

水稲作、大豆作の両方で問題になる雑草です。 水稲作ではノミニー液剤を含む体系で徹底防除をしましょう。 大豆栽培時には、中耕と非選択性除草剤の畦間・株間処理による体系防除を実施しましょう。



2.ツユクサ

葉は先が尖り、茎はしばしば地際を這いつつ、大豆に寄りかかる。花は青紫色。

水稲との輪作を進め、大豆栽培時には中耕バスタ液剤の畦間・株間処理による体系防除を実施しましょう。



3.オオブタクサ

葉は大きく、深く切れ込んで掌状になる。茎は太く直立し、かなり大型になる。

中耕とバスタ液剤の畦間・株間処理に加え、株間の残草の早期刈取またはタッチダウンiQの塗布処理を実施しましょう。



前作大豆で多発し、大豆成熟期〜収穫期まで残草した雑草は継続して問題になる可能性が高いため、 それに備えた防除体系を実施しましょう。

目次から他の対策も確認してみましょう。


脚注

1)水田輪作の大豆よりも、畑固定の大豆で雑草の種類が多く、 作付回数を重ねるほど雑草の量も増える傾向があります。 また、暖かい地域ほど雑草の種類が多い傾向があります。

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2)大豆の作付後に雑草が繁茂してからできる対策は限られています。 そのため、前作で残った雑草の状態を確認し、次作でまん延しないよう、 適切な予防策を採ることが肝心です。

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3)湿害などで大豆の生育が不良である場合には、土壌処理剤の防除効果の低下や、 大豆による被陰の不足で雑草がより繁茂します。 大豆の出芽・苗立ちの確保は雑草防除の観点でも重要です。

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4)大豆の播種前から生育していた雑草が播種後に再生すると、 土壌処理剤では防除できません。播種前に生えていた雑草は全滅させる必要があります。

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5)前作の大豆で雑草が残っていた圃場で連作する場合、前作よりも雑草の量が増える可能性が高くなります。 雑草害が生じていなくても、次作の雑草防除対策の強化が奨められます

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6)狭畦栽培では大豆が畦間を覆うまでの期間が短いので、雑草を防除する期間が短縮され、特に幼植物が小さい雑草には有効です。 しかし、アサガオ類など、種子の大きい難防除雑草が侵入してしまうと、狭畦ではむしろ防除が難しくなります。

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