黒毛和種去勢牛の肥育後期における丸粒トウモロコシ給与技術


[要約]

肥育後期の丸粒トウモロコシ給与が、黒毛和種去勢牛の産肉性に及ぼす影響を大麦 給与と比較して検討した結果、丸粒トウモロコシ給与は圧ぺん大麦・挽割り大麦と同等の 肉質が得られることを明らかにした。

[キーワード] 丸粒トウモロコシ、黒毛和種去勢牛、肥育 
[担当] 千葉畜総研・生産技術部・肉牛研究室、茨城畜セ・肉用牛研究所・飼養技術研究  室、栃木畜試・畜産技術部・肉牛研究室、群馬畜試・大家畜部・酪農肉牛課
[連絡先] 043-445-4511
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・普及 

[背景・ねらい]

平成9〜10年度に実施した4県による協定試験の結果、丸粒トウモロコシは加工度の異なる挽割りおよび圧ぺんトウモロコシ給与と同等の発育・枝肉成績が得られ、黒毛和種去勢牛の肥育全期間において濃厚飼料中30%まで配合可能であることが明らかになった。しかし、和牛肥育では肉質向上のため、肥育後期には大麦が多く用いられていることから、丸粒トウモロコシ給与で大麦と同等の産肉性が得られるかを検討するため、茨城、栃木、群馬、千葉の4試験場による協定試験を実施した。

[成果の内容・特徴]

  1. 供試牛は、19ヶ月齢の黒毛和種去勢牛で、各県がそれぞれ同一種雄牛の産子を10〜42頭を供試した。試験期間は39週(19〜28ヶ月齢)とし、試験区は丸粒トウモロコシ給与区(以下:丸粒区n=13)、挽割り大麦給与区(以下:挽麦区n=15)、圧ぺん大麦給与区(以下:圧麦区n=14)の3試験区を設定した。丸粒区の濃厚飼料中における丸粒トウモロコシの配合割合は30%とし、挽麦区では挽割り大麦、圧麦区では圧ぺん大麦をそれぞれ30%ずつ増量し、他の飼料については同一の配合割合とした。また濃厚飼料と粗飼料(稲ワラ)の給与比率は92:8とした(表1)。
  2. 濃厚飼料および粗飼料摂取量では、丸粒区の値が挽麦区のそれに対して有意に高かった。また、圧麦区はその中間であった(表2)。
  3. 中間時および終了時体重は圧麦区がやや高い傾向を示したが、区間に有意差は認められなかった。1日増体量においても中間時以降に圧麦区が高くなり、全期間では圧麦区が最も高く、次いで丸粒区、挽麦区の順であったが有意差は認められなかった(表3)。
  4. 枝肉成績では、BMSaA締まり・きめ等級、肉質等級は丸粒区の値が最も高く、挽麦区および圧麦区との間に有意差が認められた。枝肉重量および皮下脂肪の厚さは圧麦区の値が有意に高かった。肉質分析の結果では、丸粒区が粗脂肪含量が高く、総色素量および脂肪融点(皮下脂肪)でやや低い傾向が認められた(表4)。
  5. 以上の結果、丸粒トウモロコシ給与によって圧ぺん大麦・挽割り大麦給与時と同等以上の産肉性が得られることが明らかになった。さらに丸粒トウモロコシは価格が安価であり、肥育後期飼料として利用することは経済的に有利である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 黒毛和種去勢牛の肥育後期では、肉質向上を目的に大麦が広く用いられているが、丸粒トウモロコシでも同等の産肉性が得られ、さらに飼料費コストの削減が期待できる。
  2. 丸粒トウモロコシの利用に際しては給与方法をTMRとし、濃厚飼料中の混合割合を30%以内とする。
  3. 平成11年度関東東海農業研究成果情報(p118)も併せて参照されたい。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:地域未利用資源と丸粒穀類を組み合わせた飼料給餌方法による低コスト・高品質牛肉生産技術の開発

予算区分

:国補(地域新技術)

研究期間

:1998〜2000年度

研究担当者

:大久保貞裕、井口明浩、山田真希夫、小林正和、森知夫(千葉畜セ)、関正博、矢口勝美、笠井勝美、飯島知一(茨城畜セ肉研)、久利生正邦、神辺佳弘、桜井由美(栃木畜試)、木村容子、浅田勉、砂原弘子(群馬畜試)

発表論文等


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