消化性に優れるソルガム新品種「秋立」
[要約]
高消化性遺伝子“bmr-18”を持つソルガムF1品種「秋立」を育成した。本品種は、晩生で、bmr-18遺伝子を持つ系統としては多収で耐倒伏性に優れ、サイレージの栄養価および嗜好性も優れている。寒冷地域南部から中部地域の標高1000m以下の地域を適地として高品質サイレージ用品種として普及が期待される。
[キーワード] |
ソルガム、高消化性遺伝子、bmr-18遺伝子、栄養価、嗜好性、晩生 |
[担当] |
長野畜試・草地飼料部・ソルガム育種指定試験地 |
[連絡先] |
0263-52-1188 |
[区分] |
関東東海北陸農業・畜産草地 |
[分類] |
技術・普及 |
[背景・ねらい]
ソルガムは遺伝的な変異が大きく、優れた乾物生産性、環境適応性、再生力などの特性を持つ。しかし、同じ長大型飼料作物のとうもろこしと比較して、茎葉部の消化性、サイレージの発酵品質、家畜の嗜好性などに劣ることが問題とされてきた。そこで、茎葉部のリグニン形成を抑制する高消化性遺伝子“bmr-18”を導入することによって、茎葉部の消化性や家畜の嗜好性に優れたF1品種を育成しようとした。
[成果の内容・特徴]
- 「秋立」は、高消化性遺伝子“bmr-18”を持つソルゴー型ソルガムで、出穂期は「KCS-105」より遅く、早晩性は晩生である(表1)。
- サイレージの発酵品質は良好で、その消化性・嗜好性および栄養価は「KCS-105」より優れ、「葉月」並である(表1、図1)。
- 原料草茎葉部の構造性物質(繊維)の消化性は「葉月」並かやや高く、「KCS-105」より優れる(表1、図1)。
- 試験期間中の平均乾物収量は「KCS-105」対比78%、「葉月」対比145%で、bmr遺伝子を持つ系統としては多収である(表1、図2)。
- 平均乾物穂重割合は「KCS-105」に比べ3%程度、葉月」より20%低い。乾物率は「KCS-105」並で、茎の乾汁性は汁性である(表1)。
- 耐倒伏性は、「KCS-105」、「葉月」より優れる(表1)。
- すす紋病抵抗性、紋枯病抵抗性および条斑細菌病抵抗性は「KCS-105」並かやや劣り、「葉月」より優れる。紫斑点病には罹病性で、その発病程度は「葉月」並で、判定は「極弱」である(表1)。
- アブラムシの発生程度は「KCS-105」、「葉月」より多い。アワノメイガによる被害程度は「KCS-105」よりやや少なく、「葉月」より少ない。鳥害の発生程度は「KCS-105」より少なく、「葉月」並である(表1)。
- 初期生育は「KCS-105」、「葉月」並で、稈長は「KCS-105」より低く、「葉月」より高い。稈径は「KCS-105」並で、「葉月」より太い(表1)。
- 3ヶ年平均のF1精選種子重は26.7kg/aで、採種性は実用レベルにある(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 寒冷地南部から中部地域の標高1000m以下の地域を適地とする。
- 平均気温15℃以上で早播きする。晩播栽培には適さない。栽植密度は1667本/a程度とし、播種量は10アール当たり500〜800gとする。紫斑点病多発地帯での栽培は避ける。
[具体的データ]
図1「秋立」のサイレージの推定TDN
含量および原料草茎葉部のOb/OCW (長野畜試 1998年〜2000年)
図2「秋立」の地域別乾物収量の対「KCS-105」比および対「葉月」比
[その他]
研究課題名 |
:サイレージ用ソルガムF1品種の育種 |
予算区分 |
:指定試験 |
試験期間 |
:平成4年〜12年 |
研究担当者 |
:春日重光、海内裕和、我有満 |
発表論文等 |
:平成13年10月24日品種登録出願受理(第13708号) |
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