黒毛和種雌牛の卵巣摘出は肥育成績に影響しない


[要約]

黒毛和種雌牛群飼肥育において、発情行動を抑制するために、肥育開始前に卵巣を摘出を行なっても、肥育期間中の増体及び肉質に影響しない。

[キーワード] 肉用牛、飼養管理、卵巣摘出
[担当] 茨城肉牛研・飼養技術研究室
[連絡先] 0295-52-3167
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

一般に、雌牛の群飼において発情時の採食量の低下や乗駕による事故の発生が懸念される。発情行動を抑制する方法として、卵巣摘出が知られているが、肥育成績に及ぼす影響は明らかにされていない。そこで、本試験では供試牛に黒毛和種雌牛を用い、雌牛の群肥育時における卵巣の摘出が発育・産肉性に及ぼす影響について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 黒毛和種雌牛について、肥育開始直前生後10〜11ヶ月齢に市販の卵巣摘出器具を使用して、直腸を介して卵巣の付着部位を座滅切除後摘出し試験区、摘出しないものを対照区とし、肥育期間中の体格推移、増体重量及び肉質について比較した(表1)。
  2. 体重、一日当たり増体量、体高、胸囲について試験区と対照区の間に有意差がなく、卵巣摘出は発育に影響しないと考えられる(表2表3)。
  3. 肉質について各項目とも試験区と対照区の間に有意差がなく、卵巣摘出は肉質に影響しないと考えられる(表4)。
  4. 試験実施時期の違いについて、各項目において有意差はなかった。
  5. 肥育期間中、両試験区とも乗駕行動による事故はなかった。

[成果の活用面・留意点]

  1. 今回摘出時の事故はなかったが、膣壁に穴を開けるため、臓器を傷つける危険性や細菌感染に対して、充分注意が必要である。
  2. 今回はデータ収集していないが、卵巣摘出牛の発情に伴う乗駕行動が抑制されることによる事故防止効果が報告されている。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:常陸牛の肉質向上に関する試験

予算区分

:県

研究期間

:1998〜2000年度

研究担当者

:小野圭司、笠井勝美、関正博、矢口勝美

発表論文等

:小野(2001)茨城畜セ研報第31号89〜93


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