牛初期胚割球の分離・集合操作による一卵性複数子生産


[要約]

8〜38細胞期の牛胚53個を用いて129個の分離集合胚を作出したところ、62個の胚で移植可能ステージまでの発生が認められた。分離集合胚の作出条件としてはドナー胚のステージは16細胞期以上、集合割球数は5個以上で比較的良好な発生率が認められた。

[キーワード] 分離集合胚、牛胚
[担当] 群馬畜試・大家畜部・繁殖技術課
[連絡先] 027-288-2222
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい] 一卵性複数子の生産方法には、核移植法と胚の分割法があるが、核移植法については細胞分化のメカニズムや技術的課題が残されており、生産現場での実用化は難しい。
一方、7〜8日齢の移植可能胚を2等分割する切断分割法で、双子以上の複数子や雌雄判別した双子を生産する成功例はまれである。
そこで、5日目胚の分割法として、割球を分離したのち空にした透明帯内に再集合させる方法により、分離集合胚を作出するとともに、PCR法による雌雄判別技術を組み合わせて、雌雄が明らかな1卵性複数子の生産を試みた。

[成果の内容・特徴]

  1. 53個のドナー胚を供試して129個の分離集合胚を作出した。うち62個の胚が胚盤胞期胚まで発育し、内、44個が優良ランク胚であった。
  2. ドナー胚の発育ステージは16細胞期以上、集合割球数は5個以上で比較的良好な成績が得られた(表12)。また、ドナーステージに対する集合割球割合については、集合割球割合が少なくなるほど発育率が低くなる傾向にあった(表3)。
  3. 培養条件については、共培養した場合に優良胚率が高くなる傾向にあった(表4)。
  4. 雌雄判別について満足できる結果は得られていない。材料となる割球数が少数であるため判定結果が安定しないものと考えられる。
  5. 6胚を移植し2胚で受胎が確認され、うち1胚は雌和子牛が誕生した。

[成果の活用面・留意点]

  1. 生産現場において、性判別した一卵性双子以上をより安定的に生産する可能性が示唆された。
  2. 作出胚の細胞数や内細胞塊の細胞数を調査するとともに、受胎率への影響についても調査する必要がある。
  3. ドナー胚ステージによる各割球の分化能についても検討する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:牛胚の発生に有効な顕微操作及び周辺技術の構築に関する研究

予算区分 

:県単

研究期間 

:2001〜2003年度

研究担当者

:堀澤 純、須藤慶子

発表論文等

:須藤ら(2001)群馬畜試研報8:投稿中


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