雌豚における黄体退行誘起のためのPGF2α連続投与期間


[要約]

豚の黄体開花期(排卵後6日から)にPGF2αの2つのタイプ、フェンプロスタレン1.0mgを1日1回、6日間あるいはジノプロスト10mgを朝夕2回、6日間連続投与することにより、4〜6日目から黄体退行を誘起でき、発情周期を短縮することが出来る。

[キーワード] 豚、黄体退行、発情調整、発情同期化、PGF2α
[担当] 長野畜試・養豚部、東京農工大農学部・獣医学科・臨床繁殖研究室
[連絡先] 0263-52-1188
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

豚では牛と異なり、発情周期の12日以前にプロスタグランディンF2α(PGF2α)を投与しても黄体退行効果は得られないとされている。
雌豚にPGF2αを発情周期の5日(発情開始日を0日とする)から12時間間隔で6日間連続投与すると、黄体が早期に退行し、発情周期の13〜14日前後に発情が回帰することが Estill,C.T.et al.(1993)により報告されている。
今回は、正常な発情周期を営む雌豚において、黄体退行を誘起するPGF2αの最少連続投与期間について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 発情周期を正常に回帰するLW種経産豚3頭を反復供試して検討した。排卵後6日(排卵日を0日)から11日まで6日間、対照区の1例にはポリエチレングリコール2mlを1日1回頚部皮下注射し、PGF2α投与区の4例中2例にはフェンプロスタレン1.0mg/2mlを1日1回頚部皮下注射し、他の2例についてはジノプロスト10mg/2mlを朝夕2回耳根部筋肉内に注射した。投与後は、卵巣の変化を直腸検査法により調べ、種雄豚による試情を行って発情の発現状況を確認した。また、頚静脈より採血し、血漿中のプロジェステロン(P4)とエストラジオール・17β(E2)の濃度を測定した。
  2. 対照区の1例では、排卵後20日に発情が回帰し、排卵後21日に次回排卵を認めた。血中P4濃度は、排卵後13日まで高濃度を維持したのち急激に低下し、同時期からE2濃度は急激に増加し、正常発情周期における他の多くの報告と同様な推移を示した(図1)。
  3. 半減期が著しく長いフェンプロスタレン投与の2例では、血中P4濃度は投与開始後6日(投与開始日を0日)から急減し、ほぼ同時期にE2濃度は急増して、排卵後18、17日に発情が回帰し、排卵後19、18日に次回排卵した。
  4. ジノプロスト投与の2例では、血中P4濃度は投与開始後4、3日から急激に低下し、それと共にE2濃度は急増し、排卵後15日に2例共に発情が回帰し、排卵後17、16日に次回排卵した(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本成果は、発情調整が必要な胚移植などのバイオテクノロジー分野を中心に活用が出来るものと考えられる。
  2. 使用した薬剤の総経費:ジノプロスト約23,000円,フェンプロスタレン約12,000円

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :豚の改良増殖試験
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2001年度
研究担当者 :伊東正吾、田中知巳、加茂前秀夫
発表論文等 :第94回日本繁殖生物学会講演要旨, p.80, 2001

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