超早期離乳母豚の分娩後子宮修復期間


[要約]

分娩後6〜12時間で離乳する超早期離乳母豚は、分娩後約14日で排卵を伴う発情が回帰すると報告されているが、子宮の完全修復には肉眼所見と組織学的所見により検討するとさらに約7日を要し、従って、分娩後約3週間経過で完了するものと推察された。

[キーワード] 豚、周産期、子宮修復、超早期離乳
[担当] 長野畜試・養豚部
[連絡先] 0263-52-1188
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

豚の分娩後発情回帰日数は、自然哺育母豚においては離乳後3〜7日である。一方、分娩後6〜12時間で離乳する超早期離乳母豚の場合、妊娠黄体は分娩後約7日で消退するとともに、分娩後6〜8日で小卵胞の発育が開始され、分娩後約14日で発情が回帰するとともに排卵し、受胎可能となることが認められている(伊東ら:1986)。しかしこの場合、受胎はするものの産子数が少ない傾向である報告も認められる(宮脇ら:1982)。
そこで、分娩時に最も物理的ダメージを受け、胚の着床に大きな影響を与える子宮の修復状態を確認し、超早期離乳母豚の分娩後の交配時期を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 供試豚は、超早期離乳したランドレース種13頭で、分娩後3〜24日において屠殺して 生殖器を採取した後、各部位の肉眼所見と重量および大きさを計測した。ホルマリン固定後常法により組織標本を作製し、光学顕微鏡により観察した。
  2. 左右子宮角重量は分娩後14日頃まで減少著しく、分娩後15〜21日では減少傾向は認められるものの、その程度は緩慢となった。この傾向は、1産次においても2産次においても同様であった(図1)。
  3. 子宮の内景所見では、粘膜の充出血または出血斑および水腫が分娩後13日までの例に認められたが、それ以降においては、分娩後21日の1例で充血所見が認められた以外は特に指摘すべき所見は認められなかった。
  4. 子宮内膜上皮細胞と子宮筋層の厚さは、分娩後20日前後の時期に安定する傾向が認められた。また卵管と子宮腺の上皮細胞の厚さは、大きな変化は認めなかった(図2)。
    なお、子宮腺と子宮粘膜の細胞には、分娩後11日以前の全例と13日および19日の例において空胞と萎縮、核濃縮が認められた。
  5. 子宮重量、肉眼所見、組織像から、分娩後2〜3週で子宮が修復するものと推察した。

[成果の活用面・留意点]

  1. この成績は、分娩後6〜12時間で超早期離乳する人工哺育技術において得られたものである。
  2. 排卵を伴う発情が分娩後約14日で回帰する超早期離乳技術を繁殖効率の点で有効な技術とするためには、今後、発情調整技術または子宮修復促進法の組合せを検討することが必要と考えられる。

[具体的データ]

                                図2 超早期離乳母豚の各生殖器組織における測定値

[その他]

研究課題名 :分離早期離乳による母豚の繁殖率向上技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :2000〜2001年度
研究担当者 :伊東正吾、宮脇耕平
発表論文等 :第99回日本畜産学会大会講演要旨, p.62, 2001

目次へ戻る