α−リノレン酸強化豚肉の加熱調理による損失抑制


[要約]

アマニ油を飼料添加してα−リノレン酸を高めた豚肉を加熱調理すると、α−リノレン酸が著しく減少するが、アマニ油単独でなくビタミンEやカテキンを併用給与することで、調理によって失われるα−リノレン酸の量を抑制できる。

[キーワード] アマニ油脂肪酸カルシウム、α−リノレン酸、脂質過酸化物
[担当] 三重科技セ・畜産研究部・中小家畜グループ
[連絡先] 0598-42-2029
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

機能性を有するといわれるα−リノレン酸を強化した銘柄豚肉はすでに販売されているが、加熱調理豚肉中のα−リノレン酸量は明らかになっていない。当センターでは、アマニ油脂肪酸カルシウムを飼料に添加給与し、α−リノレン酸を 豚肉へ賦与・強化する方法をすでに報告した(平成11年度研究成果情報)。
α−リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸は酸化に対して不安定であるといわれているため、抗酸化作用を有するといわれているビタミンE、カテキンをアマニ油と併用給与し、豚肉中に賦与・強化されたα−リノレン酸の加熱調理による損失抑制効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 肉豚肥育後期用飼料にアマニ油脂肪酸カルシウム3%、カポック油粕1.5%を添加した飼料と、その飼料にビタミンE200IU/kgとカテキン0.02%をそれぞれ 併用添加し、各飼料4頭、計16頭の肥育豚に出荷前2週間給与した。生産した豚肉をホットプレートで230度5分加熱(以下「焼き」という。)および、沸騰水浴中30分加熱(以下「煮」という。)し、胸最長筋周辺の皮下内層脂肪中α−リノレン酸量と脂質の過酸化物価(PV)を測定した。
  2. 未調理の豚肉(生肉)中のα−リノレン酸量はアマニ油を添加した飼料とカテキンを併用した飼料では同等に移行するが、ビタミンEを併用した飼料では移行量は少い(図1)。
  3. アマニ油を添加した飼料の豚肉中α−リノレン酸量は加熱調理により半減するがビタミンEを併用することで損失を抑制する効果がみられる。また、カテキンの併用は低い温度・長時間での加熱調理で損失を抑制する効果がみられる(図1)。
  4. 加熱調理後のα−リノレン酸量は、調理条件(「焼き」と「煮」)によっては変わらない(図1)。
  5. 加熱調理による脂質過酸化物の生成傾向はそれぞれの肉で変わらない。また、(「焼き」)で調理した場合は未調理と変わらないが、(「煮」)調理で増加する(図2)。また、ビタミンE、カテキンを併用してもPVの上昇が抑制されることはない。

[成果の活用面・留意点]

  1. α−リノレン酸強化豚肉は加熱調理しても、一般の豚肉より高くα−リノレン酸レベルが維持される。
  2. 揚げものなど他の調理条件を含めて、人間がα−リノレン酸を効率よく摂取できる 効果的な調理方法を検討する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :県内農林水産物への機能性成分賦与・強化による健康食品の開発
予算区分 :県単
研究期間 :1998〜2000年度
研究担当者 :市川隆久、出口裕二、和田健一、安藝博、田中稔也
発表論文等 :市川、出口(2001)日本養豚学会誌38(2)号:85

目次へ戻る