スーパーカウの体細胞を利用したクローン牛の生産


[要約]

スーパーカウの卵丘細胞を利用して核移植操作を行い、クローン胚を作出、未経産牛に移植することによって、体細胞クローン牛4頭(双子2組)を生産した。出生後のクローン牛の状態及び発育は良好である。

[キーワード] スーパーカウ、卵丘細胞、核移植、クローン牛
[担当] 東京畜試・応用技術部
[連絡先] 0428-31-2171
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

体細胞クローン技術は、能力があらかじめ分かっている牛の体細胞をドナー細胞として利用できるため、高能力牛の大量生産が可能になると期待できる。そこで当場保有のスーパーカウ、「ホナミ MBB テルスター ET」の卵丘細胞をドナーとして核移植操作を行い、クローン胚を作出、未経産牛に移植することによって体細胞クローン牛生産を試みた。

[成果の内容・特徴]

ドナー細胞として経膣採卵時に得られた卵丘細胞を、レシピエント卵子として屠場由来のF1卵子をそれぞれ使用した。核移植操作および細胞融合処理後、胚盤胞に発生した再構築胚を発情後7日目のホルスタイン種未経産牛3頭に、それぞれ2胚づつ移植した。

  1. ドナーとなる体細胞は10%ウシ胎児血清加D-MEMで培養し、4〜7継代培養後、10%エチレングリコールで0.25mlストローに凍結保存したものを用いた。
  2. のべ166個の供試卵に対し、融合卵数70個、分割卵数55個、胚盤胞数30個であった(表1)。
  3. 移植した3頭すべてが受胎したが、そのうちの1頭は妊娠141日目に双子を流産した (表2)。流産胎児の組織病理診断を農水省家畜衛生試験場に依頼したところ、胎盤の石灰沈着が顕著に見られた。
  4. 妊娠牛1頭を妊娠279日目に帝王切開し、双子(1号、2号)を分娩させた。体重はともに36.2kgであった。残りの1頭は副腎皮質ホルモンならびにPGF2αによる分娩誘起処理を施し、妊娠281日目に双子(3号、4号)を自然分娩させた。体重は32.8kg、29.0kgであった。クローン産子の出生後の状態及び発育は良好である(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 家畜の育種改良や、増殖のための基礎的データの収集を行うことができる。
  2. 体細胞クローン産子は流産、過大子による難産、出生後の虚弱体質などの割合が高いとされている。そのためクローン胚生産段階における培養方法や、移植する胚の選定、分娩管理方法などについて検討し、これらの発生原因の究明と回避策を確立する必要がある。
  3. 出生したクローン子牛の正常な発育、繁殖能力を確認し、またドナー牛との同一性、クローン子牛間の相似性、生産物の正常性などについて検証する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:牛受精卵の高度利用開発試験

予算区分

:都単

研究期間

:1998年〜継続

研究担当者

:西木秀人、太田久由、熊井良子

発表論文等

:なし


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