日本なし「幸水」成木樹の施肥窒素吸収率からみた効率的施肥法


[要約]

日本なし「幸水」成木樹へ施肥した重窒素の吸収率は、11月基肥よりも6月追肥が高い。従って、春〜初夏にかけて窒素を分施することで、現在の基肥主体の施肥法よりも効率的な施肥ができる。

[キーワード] 日本なし、「幸水」、重窒素、窒素吸収率、基肥、追肥
[担当] 長野県南信農業試験場・環境部、栽培部
[連絡先] 0265-35-2240
[区分] 関東東海北陸農業・果樹
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

日本なし「幸水」は長野県の基幹品種であるが、近年樹齢の経過と共に収量が低下している。現地では樹勢回復のため窒素施肥量が増加しているが、過剰な窒素施肥の根拠が不明の上、増肥による環境負荷も懸念される。そこで重窒素(15N)を用いて成木樹での施肥窒素の吸収と分配を明らかにすることにより、効率的な施肥体系を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 「幸水」25年生樹に15N標識硫安を時期別に施用して当年秋に解体し、施肥窒素の吸収率を調査した。その結果、各処理2樹の平均値は、11月基肥では18%であったのに対し、6月追肥では28%と10%程度高かった。(図1
  2. 樹体に吸収された施肥窒素の部位別割合を比較すると、基肥よりも追肥で枝幹や根への分配が多かった。このことから、6月追肥は、新梢に移行して翌年の花芽着生を良好にさせるとともに、旧枝の肥大と根の伸長や充実に有効に働くと考えられた。(図2
  3. 上記とは別に基肥主体の施肥体系と分施による施肥体系を比較したところ、収量性には有意差はみられなかったが、潜芽発生新梢のえき花芽着生率は分施による施肥体系が高くなる結果が得られた。また、新梢1m当たりのえき花芽数も同様であった。なお、糖度等の果実品質及び樹勢に差はなかった。(表1

[成果の活用面・留意点]

  1. 樹勢が強い園や熟期が遅れるような園では窒素の追肥は控える。
  2. 環境負荷に配慮し年間窒素施肥量が増加しないよう、基肥量を減らして追肥を行う。なお、年間施肥配分は、基肥40%・3月肥15%・6月肥15%・9月肥30%を目安とする。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :早生ナシ「幸水」の施肥効率向上とせん定改善による多収生産新技術の開発
予算区分  :国補(新技術)
研究期間 :1999〜2001年度
研究担当者 :宮下純、塩原孝、泉克明、小川秀和、船橋徹郎、萩原保身、山西久夫、梅宮善章(農研機構果樹研)

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