溶脱空気の少ない高精度な土壌水分計測用テンシオメータ


[要約]

開発したテンシオメータは、Pコック、フルボア型ボールバルブ、ステンレス管等で構成され、溶脱空気の発生量が少なく、排気操作が簡便かつ高精度である。

[キーワード] テンシオメータ、溶脱空気、排気操作、簡便、高精度
[担当] 愛知農総試・経営環境部・農業土木研究室
[連絡先] 0561-62-0085
[区分] 関東東海北陸農業・農業情報研究、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

Henderson ら(1963)が、セラミックカップとプラスティク材とを組み合わせたテンシオメータを提案して以来、圧力計測部が水銀マノメータ、ブルドン管型圧力計、半導体圧力センサに代わった変遷はあるが、テンシオメータの根本的な改善はなかった。
テンシオメータの最大の難点は溶脱空気の排気操作の煩雑さにあり、空気発生量を少なくして排気頻度を減少させ、排気操作を簡便にした高精度なテンシオメータを開発した。

[成果の内容・特徴]

  1. テンシオメータは、Pコック、フルボア型ボールバルブ、ステンレス管を導入して構成され(図1)、中央部に位置するフルボア型ボールバルブで閉鎖した上部を空気溜め系、下部を計測系として、計測系内の負圧を半導体圧力センサで検知して土壌水分張力(マトリックポテンシャル)を測定する。なお、充填水は通常脱気水を使用するが、農家での使用を考慮して、普通の水道水を敢えて使用した。
  2. 溶脱空気の発生量は、テンシオメータの計測系内の充填水量と、ポーラスカップを保持するテンシオメータ本体の材質に影響される(図2表1)。そのため、計測系のテンシオメータ本体は圧力による収縮・膨脹のほとんどないステンレス管を採用した。更に、計測系内の充填水量が少ないほど溶脱空気量は減少するので、ステンレス管内に丸棒を挿入して充填水量を少なくした。
  3. テンシオメータは、作物株から10cm、潅水チューブから10cmの深さ15cmに設置したが、テンシオメータ周囲の直径11cmを防根シートで覆って作物根の影響がない場合も測定してみると、両者の差は大きい(図3)。この差は作物根の直接的吸水に起因する。
  4. 溶脱空気の排気は、中央部のフルボア型ボールバルブを開閉する5〜6秒の操作で済み、空気溜め系の透明管内が一杯になったら上端のPコックを開栓して注水する。
  5. 測定精度は、最初に半導体圧力センサ自体の精度をU字水銀計で確認したのち、半導体圧力センサを取り付けたテンシオメータのポーラスカップ部分を容器に入れて減圧し、U字水銀計で計測した。その結果、ステンレス管を導入することによりpF2.95(△900cm水柱)まで±2%誤差以下の高精度で計測でき、その上ステンレス管に丸棒を挿入することによって、溶脱空気の発生量が従来の1/100以下となった。

[成果の活用面・留意点]

  1. テンシオメータ本体の重量が大きくなり、カップが割れやすいので設置に注意する。
  2. 排気操作頻度は夏の温室メロンで3日に1回程度で、注水は10日に1回程度である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 施設野菜生産における個体群栄養生理に基づいた高生産環境保全型栽培技術
予算区分  国補(地域基幹)
研究期間  1999〜2001年度
研究担当者 榊原正典
発表論文等 特願2001−092707、土壌水分計測用テンシオメータ

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