球状生子率が高く精粉収量が多いこんにゃく新品種候補系統「群系70号」


[要約]

群系70号は球状生子率が高いため生子植付け機が使用でき、球茎収量が多く精粉歩留が高いため精粉収量は「あかぎおおだま」より15%程度多い。また、葉枯病、根腐病にも「あかぎおおだま」並に強く、低コスト・高収益生産に役立つ。

[キーワード] こんにゃく、新品種、低コスト、精粉歩留、球状生子、機械植付、耐病性
[担当] 群馬県農業試験場・こんにゃく分場
[連絡先] 0279-22-2144
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

こんにゃくは国際化の影響が憂慮されているため、さらに労働費の縮減と生産性の向上が必要である。「あかぎおおだま」は全国生産量の70%を占める多収・耐病性品種であるが、棒状生子であるため生子の植付けに機械が使用できず、また生子貯蔵上の難点もある。「在来種」、「はるなくろ」は葉枯病、根腐病に対して弱い欠点を有する。平成9年に育成した高品質・耐病性の「みょうぎゆたか」は晩生であるため群馬県北部や福島県での栽培には適さない。以上のことから、一層の低コスト・高収益生産につながる優良品種の育成が強く望まれている。

[成果の内容・特徴]

  1. 「群系70号」は昭和55年に、群馬県農業試験場において、「群系55号」を母、「在来種」を父として交配し、選抜した系統である。
  2. 本系統の草型は“半立型”で、葉色は“緑”である。葉柄斑紋の大きさは“小〜中”で、その分布は“点在”である。主芽の苞の紅色が極めて濃い。球状生子の割合は1年生で95%前後、2年生で85%前後、3年生で70%前後であり、高年生では減少するが、栽培には主に2年生の生子が用いられるため、生子植付け機の使用が可能である。
  3. 萌芽速度が遅く、出芽期、開葉期とも“晩”である。成熟期は10月中旬で「あかぎおおだま」並の“中生”である。1年生に見られる2次葉の発生は少ない。
  4. 各種病害に対して“中”程度の耐病性を示す。葉枯病及び根腐病に対しては「あかぎおおだま」並に強く、腐敗病にも「在来種」並に強い。Fusarium oxysporum Schlechtendahlによる乾腐病には対照品種より強い“弱〜中”である。
  5. 球茎収量は「在来種」、「はるなくろ」より多く、「あかぎおおだま」並である。精粉収量は「あかぎおおだま」より15%程度多い。生子収量は1年生でやや少なく、2年生以上では「はるなくろ」と同等で、「あかぎおおだま」より少ない。これは、1個重が小さい球状生子が多いためであり、生子着生数は「あかぎおおだま」と同等である。
  6. 荒粉歩留は「あかぎおおだま」並〜やや高い。荒粉からの精粉歩留は「在来種」、「あかぎおおだま」より10%程度高く優れる。このため、生芋からの精粉歩留は「在来種」より低いが、「あかぎおおだま」より15%程度高い。精粉粘度は「あかぎおおだま」よりやや低いが、「在来種」、「はるなくろ」より高い。 

[成果の活用面・留意点]

  1. 群馬県(12年度栽培面積4,526ha)では「はるなくろ」、「あかぎおおだま」の一部に代替して1,600ha、福島県(同90ha)では「在来種」、「あかぎおおだま」の一部に代替して50haの普及が見込まれる。
  2. 本系統は1年生(生子)と切断増殖栽培で出芽不良を生じることがある。このため、生子の貯蔵において低温、低湿にならないように注意する。また、切断増殖栽培では植付けを5月上旬までに行う。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:こんにゃく品種育成試験

予算区分

:指定試験

研究期間

:2001年度(1980〜2001年)

研究担当者

:内田秀司,加藤 晃,飯塚弘明,加藤哲史,三輪計一,郡司孝志,清塚泰昭,山田千代,太刀川洋一,下山 淳,小渕保夫,藤井光一,下田俊彦 ,木暮昭二,齋藤泰亮,斉藤幸雄,柴田 聡 

発表論文等

:なし


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