水稲「なつしずか」の育成と準奨励品種採用


[要約]

水稲「なつしずか」は、成熟期が「ひとめぼれ」より8〜10日早い極早生の粳品種であり、良食味でいもち病に強く、耐倒伏性、玄米外観品質が優れる。平成13年度より準奨励品種に採用し、早場米生産地域とレタス栽培地域に普及を図る。

[キーワード] 水稲、極早生、準奨励品種、良食味、早場米生産地域、レタス栽培地域
[担当] 静岡農試・作物部
[連絡先] 0538-33-6678
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

全国的に良食味米生産が進む中で、本県では「コシヒカリ」を中心とする早生良食味品種への作付け偏重が生じている。このため、作業分散の可能な極早生種で、本県独自の良食味品種が要望されている。また、レタスとの複合経営地帯では、前作用の極早生品種が求められている。そこで、良食味で、耐倒伏性および耐病性に優れる極早生品種を育成、選定する。

[成果の内容・特徴]

  1. 「なつしずか」は、昭和63年に「関東136号」と「コシヒカリ」のF1を母に、「ナツヒカリ」を父として交配を行い、育成された粳種である。
  2. 奨励品種の中で最も成熟期の早い「ひとめぼれ」に比べて、出穂期が4〜7日、成熟期が8〜10日早く、本県では‘極早生’に属する(表1)。
  3. 稈長は「ひとめぼれ」より8cm程度短く、穂長はやや短い。穂数は「ひとめぼれ」並かやや多く、草型は偏穂数型に属する(表1)。
  4. 玄米千粒重は「ひとめぼれ」よりやや小さい。玄米は基白の発生が少なく、外観品質は「ひとめぼれ」より優れる(表1)。
  5. 収量は「ひとめぼれ」よりやや少ないが、現地では比較品種とほぼ同等である(表1図1)。
  6. 稈はやや細いが、耐倒伏性が‘やや強’で「ひとめぼれ」より優る。粒着密度は「ひとめぼれ」と同程度の‘やや疎’である(表1)。
  7. 葉いもち抵抗性、穂いもち抵抗性はともに‘強’で「ひとめぼれ」より優れる。白葉枯病には‘やや弱’、縞葉枯病には罹病性である(表1)。
  8. 穂発芽性は‘中’、耐冷性は‘中’である(表1)。
  9. 食味は「ひとめぼれ」並に良好である(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 平坦地の早場米生産地域及び水田裏作野菜生産地域を普及対象地域とする。普及予定面積は300haである。
  2. 収量確保のため、栽植密度はm2当り22株以上とする。
  3. 登熟期間が短いので、米のタンパク含量を高めないよう穂肥は出穂前25日に窒素成分で3〜4kg/10a程度とする。

[具体的データ]


注) 比較品種 榛原1:コシヒカリ
  榛原2・大須賀:あきたこまち
  菊川・大東:キヌヒカリ
  小笠:はなの舞

[その他]

研究課題名 :水稲の新品種育成、水稲奨励品種決定試験
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(昭和63年〜平成12年)
研究担当者 :小池清裕、宮田祐二、田中香里、川出伸幸、山本寛人、遠藤和久、亀山 忠
 平野 亮、佐藤允通

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