えだまめ甘味成分の品種による相違


[要約]

大豆種子のスクロース濃度は成熟に伴い大きく変動し,早生品種では初夏に最大となり,えだまめ適期を迎える。その時期に最も濃度が高いのはダダチャマメ系統である。一方,秋のえだまめとして人気のある丹波黒を含む晩生種はスクロースは少ないが,耐熱性β−アミラーゼによってデンプンから生じるマルトースが甘味を補強する。

[キーワード] えだまめ,甘味成分,スクロース,デンプン,マルトース
[担当] 作物研・畑作物研究部・畑作物品質制御研究室、(食品総合研究所・流通保全部・食品包装研究室)
[連絡先] 0298-38-8960
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、関東東海北陸農業・関東東海・流通加工
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

えだまめのおいしさは甘味成分の濃度によって大きく影響される。登熟中の大豆種子にはスクロースなどの糖類や遊離アラニンが含まれる。これらの成分は,収穫後の種子におけるタンパク質合成のエネルギー源や基質として使われ,減少する。そのため,収穫後は速やかに甘味が低下する。えだまめ収穫時に甘味成分の濃度が高い大豆は収穫後にも甘味成分の残存量が多く,えだまめとして適している。そこで,大豆遺伝資源の中からえだまめ時期に甘味成分が多い品種を見出し,おいしいえだまめを育成する素材とする。

[成果の内容・特徴]

  1. 大豆在来種など46品種の登熟中の種子を経時的に採種して分析した結果,種子に含まれる糖類の組成や濃度の変化が明らかとなった。可溶性糖類やデンプンの集積には特徴的なパターンが見られ,大豆の分類が可能である(表1)。種子の肥大時期にデンプンがスクロースを上回る大豆が多い。一方,スクロースがデンプンよりも多くなる大豆には夏場のえだまめ品種が含まれていた。特に茶かおりや紫ダダチャマメはスクロースを4.3g / 100g新鮮重(FW)も含んでおり,茹でたえだまめはかなり甘い(図1A)。
  2. デンプンが多い大豆は晩生の秋大豆であった(図1B)。10月採りのえだまめである丹波黒や小糸在来などはデンプンが4.0g / 100gFWを越えるが,スクロースは2.5g / 100gFW以下と少なくおいしくないはずである。しかし,茹でるとデンプンが分解しマルトースが1.0g / 100g FW以上生成され,甘味を補っていた。
  3. 種子を茹でた時に生成されるマルトースは,晩生のみならずほとんどの登熟大豆種子で認められる。大豆種子を茹でるとマルトースが生成するのは,大豆に含まれるβ−アミラーゼが耐熱性であり,75℃下3分間でも働くためである。
  4. 夏場のえだまめが含まれる早生大豆の一部には,デンプン含量に比べてマルトース生成量が少ない,あるいはほとんどない場合が見られる(図2)。えだまめの甘味成分は夏場の品種ではスクロースであり,秋のえだまめではスクロース+マルトースである。

[成果の活用面・留意点]

  1. 茹でた時に生成されるマルトースはスクロースと異なり鮮度保持条件によらないため,甘味の補助成分として有効である。
  2. 高スクロース型茶豆とデンプン含量の多い秋大豆とを交配することでさらにおいしいえだまめを消費者に供給できると期待される。

[具体的データ]

図1 登熟中の大豆種子のスクロース含量(A)及びデンプン含量(B)の品種による相違
   えだまめの適期;

紫ダダチャマメ  

開花後  

36〜42日  

茶かおり

開花後

同上

小糸在来

開花後

45〜55日

図2 登熟中の大豆種子のデンプン含量と
   茹でて生成したマルトース量との関係

[その他]

研究課題名 :未熟大豆の甘味に関わる集積成分の解明
予算区分 :経常研究
研究期間 :1990〜2001年度
研究担当者 :増田亮一、斉藤道彦、長谷川美典、金子勝芳、原田久也
発表文献等 :(1) Masuda R, Saito, M,Harada K,Enhancement of sweet components in vegetable soybean seeds: Starch degradation during cooking enhance flavor of immature seeds. Proceedings of 2nd Vegetable Soybean Conference, p105-108,平成13年8月

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