酒米とう精時に発生するぬかの加工適性とクッキーへの利用
[要約]
酒米のとう精過程で生じるぬかはデンプン粒が損傷しており、加工利用が難しい。このぬかの有効利活用として、中ぬかは食感が良好で消費者に好評なクッキーへの利用が可能である。
[キーワード] |
酒米、ぬか、中ぬか、バター、クッキー |
[担当] |
愛知県農総試・経営環境部・流通利用研究室 |
[連絡先] |
0561-62-0085 |
[区分] |
関東東海北陸農業・関東東海・流通加工部会 |
[分類] |
技術・普及 |
[背景・ねらい]
愛知県中山間地農業の振興を図るため、酒米「夢山水」が育成された。「夢山水」は奨励品種に位置づけられ、中山間地域での作付け面積は年々増加している。
酒米のとう精過程で生じるぬか(以下「酒造米ぬか」とする。)は現状では家畜飼料や下級酒の原料などに利用されている程度であり、有効な利活用はほとんどされていない。しかし、とう精部位によっては、上質な米粉と成分的に近いと考えられる。また、ぬかにはビタミンEなど機能性成分を多く含んでいることから、機能性を活かした新商品を開発することが可能と思われた。そこで、中山間地の活性化を図るため、酒造米ぬかの加工適性を把握し、有効な利活用を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 酒米をとう精する時に発生する米ぬかはとう精する部位により、赤ぬか、中ぬか、白ぬかの3種類に分けられる。最外層である赤ぬかはタンパク質等内容成分を最も多く含み、中ぬか、白ぬかと続く。とう精20〜60%の部位から生じる白ぬかの内容成分は市販米粉(上新粉)とほとんど変わらない(表1)。
酒造米ぬかと上新粉で大きく異なる点はデンプン粒の損傷度である。上新粉の損傷デンプン度は約9%と低いのに対し、酒造米ぬかは高い値を示す。また、その損傷度は玄米の内部になるほど高く、中心部から生じる白ぬかの損傷度は60%を超える。
- 酒造米ぬかを水と練り合わせた場合、水に溶解して糊状となり、加熱すると上新粉は速やかに硬度が増すのに対して、酒造米ぬかはほとんど変化せず、糊状のままである(図1)。従って、酒造米ぬかの利用方法で「水と練り合わせる工程」を含むことは困難である。
- 水の代りにバターと混ぜ合わせて加熱した場合、酒造米ぬかは膨化しほどよい硬さとなる。バター等油脂を用いる菓子として、クッキーへの利用を検討した結果、白ぬかを用いたものは硬化するが、赤ぬか、中ぬかを用いたものは「さくさく感」があり、良好である(図2)。しかし、赤ぬかのものはぬか臭がきついため、商品化には問題がある。従って、機能性成分を含み、品質が良好である中ぬかがクッキーへの利用に適している。
- 主原料における小麦粉と中ぬかの割合を変えて行った食味検査の結果から、中ぬかを25%を含むものは0%のものとほとんど差がなく、また、50%と75%にも違いはない。しかし、100%のものはその他のものと明かに違いが認められる(表2)。
- このうち、中ぬか50%を含むクッキーは食味調査の結果から、外観、食感、味で消費者の評価は高い。
[成果の活用面・留意点]
- 地元JA等で商品化に向けて試作中である。
- 酒米「夢山水」のぬかを使用することで、酒への利用に加えさらに中山間地の活性化に寄与する。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名 |
:未利用農産資源の高付加価値化技術の開発 |
予算区分 |
:フードシステム連携強化・循環推進事業 |
研究期間 |
:1999〜2001年度 |
研究担当者 |
:吉村幸江、伊藤茂、山本厚子、村瀬誠、丹羽昭夫、井上正勝 |
発表論文等 |
:伊藤ら(2001)愛知農総試研報33:投稿中 |
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