底流循環型毛管水耕によるスイートピーの早期切り花栽培


[要約]

遮根シートで水流と根圏を区分し、根が水中に伸びられるように改良した底流循環型の毛管水耕装置でスイートピーを栽培すると、初期生育が旺盛で出荷期が前進し、切り花品質も向上する。

[キーワード] 底流循環型、毛管水耕装置、スイートピー、出荷前進、切り花品質
[担当] 長野南信試・栽培部
[連絡先] 0265-35-2240
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・花き
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

長野県で開発した底流循環型の毛管水耕装置は、制作コストが安いことから野菜関係で広く普及し、特に夏作メロンと促成イチゴの組み合わせで年間栽培体系が確立しているが、さらに組み合わせの選択肢を広げるために、野菜以外で適応する品目を開発することが求められている。
一方、本県で拡大しつつあるスイートピーの早期切り栽培は生育初期が高温期にあたることから、連作土壌では株枯れ、生育不良などの問題を抱えている。そこでこれらの問題を解決するため、底流循環型毛管水耕の適応性を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 底流循環型の毛管水耕装置は、養液の循環する部分と根の張る部分を遮根シートで区分し、吸水マットと根部支持体の培地とで水分の供給を安定させている。これにより作物は、湿気中根と水中根のバランスを取りながら生育できる(図1)。
  2. 根部支持体の培地に関係なく、底流循環型の毛管水耕の方が慣行の土耕栽培より早期から切り花ができ、切り花本数も多くなる。またスイートピーの場合、根部支持体の培地は、もみがらくん炭より調整ピートのプロミックスの方が生育がよく、切り花本数が多くなる(図2)。
  3. 切り花品質は、培地にプロミックスを用いた底流循環型の毛管水耕が、小花数が多く切り花長も長くなる(図3)。
  4. 養液濃度は、区間に差がないことから、下表に示す試験した区のうち薄い方の組成を参考に処方するのがよい(表1)。 
成分 Ca Mg
 量(g/100L)   13.0   5.3   24.4   8.5   2.9 

[成果の活用面・留意点]

  1. システムは「NK毛管水耕システム」として意匠登録され、全農長野県本部から販売されている。また、(株)笠原工業で発泡スチロール製の養液ベッドと定植パネルを製造しており、材料費は10a当たり312万円である。
  2. は種は3号ポリポットに直接行うか、128穴前後のセル成型トレイには種後、7日前後で3号ポリポットに仮植する。いずれの場合も用土にはプロミックスを用いる。育苗期間は、は種後15日前後で、根が培地内に回ったらポットから抜いてベッドに置床する。
  3. 早期切りを行う場合には、品種は冬咲き系を用いる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :スイートピーの10月からの早期切り花栽培技術の確立
予算区分 :県単基礎
研究期間 :1999〜2001年度
研究担当者 :平谷敏彦、神谷勝己、中谷まゆみ
発表論文等 :なし

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