アカヒゲホソミドリカスミカメによる斑点米防止のための雑草管理


[要約]

斑点米カメムシ類の1種であるアカヒゲホソミドリカスミカメの減農薬防除技術として、雑草防除を6月中旬から水稲の出穂14日前までに行い、出穂前後は雑草防除を行わない管理方法が効果的である。

[キ−ワ−ド] 水稲・虫害・防除・斑点米・アカヒゲホソミドリカスミカメ・雑草管理
[担当] 埼玉県農林総合研究センタ−・生産環境担当
[連絡先] 048-521-5041
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・病害虫
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

アカヒゲホソミドリカスミカメによる斑点米の多発地域では、薬剤防除が不可欠となっているが、その防除効果が不安定であることや散布時期が収穫期に近く安全性も懸念されることから、総合的な管理方法が必要である。総合的管理において、カメムシ類の主要な生息場所とされる雑草地対策が重要であるが、除草には労力や費用がかかるため、より効率的な方法を明らかにする必要である。そこで、水稲出穂期が7月中〜下旬の地帯の斑点米被害を軽減するため、イタリアンライグラスを主体とする堤防など広大な雑草地において管理法を検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. アカヒゲホソミドリカスミカメは、イタリアンライグラスなどイネ科雑草の出穂・開花につれて増加する(図1)。
  2. 水稲出穂前の水田ではアカヒゲホソミドリカスミカメの捕獲数は増加せず(図1)、水稲苗における生存日数は、成虫、幼虫ともに14日以内である(図3)。
  3. 水田内におけるアカヒゲホソミドリカスミカメの捕獲数は、周辺の堤防雑草地の刈り取りにより増加する(図1)。
  4. 堤防のイネ科雑草が出穂・開花盛期を迎えている地点では、水稲出穂期前後に雑草地の刈り取りを行わないと、水田内の捕獲数は増加しない(図2)。
  5. 6月中旬に堤防雑草を刈り取ると、7月中旬からイネ科雑草が出穂し始め、7月下旬に出穂・開花盛期を迎える(図2)。
  6. 水稲出穂期前にイネ科雑草が成熟し枯死すると、雑草地で多発するとともに水田内捕獲数は著しく増加する(表1)。
  7. 以上のことから、堤防雑草の防除を6月中旬から水稲の出穂14日前までに行い、出穂前後は雑草防除を行わないことで本虫の水田への侵入を防止できるため、斑点米の被害が軽減できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 出穂期〜乳熟期の本田の薬剤散布1回を基本とするが、カメムシの発生状況により散布回数は変更する。
  2. 7月中旬を主体とした地域では、イネ科雑草の生育段階と水稲出穂期前のカメムシの密度を抑制できるため、6月中旬の雑草刈り取りが効果的である。
  3. 雑草地の刈り取り回数を増やすほど雑草の生育が抑えられるため、本虫の増殖抑制効果が向上する。
  4. 堤防等雑草地や牧草地の管理者と刈り取り時期の調整を行う。

[具体的デ−タ]

[その他]

研究課題名 :斑点米カメムシ類と天敵に及ぼす農薬少量散布の影響
予算区分 :国補(植物防疫)
研究期間 :1998〜2000年度
研究担当者 :植竹恒夫、江村薫
発表論文等 :1)植竹・江村(2000)第5回農林害虫防除研究会報告:20
  2)植竹・江村(2001)第48回日本生態学会講演要旨集:170

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