神奈川県におけるクスアナアキゾウムシの越冬生態


[要約]

クスアナアキゾウムシの成虫は、食樹シキミの1m以下の樹幹上や株元で越冬している。また、枯死寸前の樹幹内で成虫のほか幼虫、蛹も越冬する。

[キーワード] 「シキミ、」「クスアナアキゾウムシ、」「越冬生態」
[担当] 神奈川農総研農業環境部
[連絡先] 0463-58-0333
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・病害虫
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

ミカンの転作により神奈川県西南地域にシキミが導入されたが、1995年以降クスアナアキゾウムシの加害を受けたシキミの集団立ち枯れ現象が起こり、産地は壊滅の危機に直面している。そこで、本種の生態特性を利用した防除技術を確立するため、従来不明であった本県における越冬生態を解明する。

[成果の内容・特徴]

  1. クスアナアキゾウムシの越冬成虫はシキミ外部の樹幹上、幹と枝の分岐部、幹と根の接点、地表部、地下、幹内などで多くの場合単独で、ときに2個体が接触して越冬していた。このうち特に、幹と枝の分岐部に休止している個体が多く見られた(表1)。
  2. 樹幹の内部には多くの個体が越冬していた。幼虫の齢期は一定せず、蛹も発見された。成虫は集団で(最大15個体)見られた事例もあり、その中には羽化直後と推定される体色が強く赤味を帯びる成虫も混っていた。このことから、越冬直前の時期に羽化する成 虫は幹外に出ることなく、幹内に留まって越冬することが示唆される。
  3. 発見された幼虫、蛹、成虫の越冬場所はシキミの内外とも、地上1m以下であった。
  4. 越冬中の幼虫および成虫は活動を休止していたが、いずれの個体も外気にさらされると2〜3分以内に動き始めた。
  5. シキミの樹齢は数年〜20年位がほとんどであるが、50年以上の栽培放棄林からも成虫が見出された。幼虫、蛹、成虫とも、加害を受けて衰弱した樹での越冬が見られ、枯死樹からは見出せなかった。

[成果の活用面・留意点]

  1. 被害樹の1m 以下の樹幹上、幹と枝の分岐部、幹と根の接点あるいは株元の落ち葉下や土中などを重点的に探索することにより、越冬中の成虫を捕殺できる。
  2. 枯死寸前の被害樹には幼虫、蛹および成虫が越冬しているので、その抜根・焼却は有効な防除法となりうる。

[具体的データ]

   「樹幹上」:つる性植物の被覆により傷付いた部位。草の被覆下。
   食害された樹皮の裏。地表と接する部位の食害によって削られた
   くぼみ、などの例を含む。「幹と枝の分岐部」:幹根際の枝分岐
   部の隙間(湿り気あり)。食害による木くずや虫糞に被覆された
   孔内。木くず等の被覆下。「幹と根の接点」:地際。「地表部」
   :根と根の隙間。 株元の草、落ち葉、木くず、土等の被覆下。
   幼虫が食害した樹皮裏側の空洞。「地下」:地下3cmの土中(幹
   と根の隙間)。
   調査株数、個体数は4回の調査の合計。
   齢期は、別調査で得られた幼虫93個体の頭巾の計測値をもとに
   推定。
   成虫の個体数には死亡1個体(地表部)2個体(幹内)を含む。
   これらの死亡個体はそれぞれ別株から発見。

[その他]

研究課題名 :シキミ害虫クスアナアキゾウムシの防除技術の開発研究
予算区分 :県単
研究期間 :1998〜2000年度
研究担当者 :原 聖樹、片木新作、鈴木 誠、遠藤 毅
発表論文等 :原ら (2001) 関東病虫研 (48):147-148.
 http://www.agri.pref.kanagawa.jp/nosoken/kankyo/kankyo.asp

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