パスツールピペットを利用したヒメハナカメムシ類等の薬剤感受性検定法


[要約]

パスツールピペットを利用したヒメハナカメムシ類等微小昆虫の薬剤感受性検定法は、安価、省スペースで虫体直接浸漬、ドライフィルムの両法に使用できる。

[キーワード] ヒメハナカメムシ類、パスツールピペット、薬剤感受性検定法、経済性、省スペース
[担当] 愛知県農業総合試験場・生物工学部・生物機能研究室
[連絡先] 0561-62-0085
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・病害虫
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

ヒメハナカメムシ類等有用な天敵を活用するためには他の病害虫防除に用いる化学薬剤との併用が不可欠となる。そのため化学薬剤が天敵に与える影響を知ることは生物的防除を成功させるために必要な事項である。そこでヒメハナカメムシ類等微小昆虫を対象とした室内薬剤感受性簡易検定法を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. パスツールピペットの細口側を切断して円筒状にし(内径6mm、長さ約90mm)、他方の端を75μmメッシュのナイロンゴースで覆い、中にスジコナマダラメイガ卵を張り付けた5mm幅の修正テープを入れる。これに、小型吸引ポンプを用いてヒメハナカメムシを雌雄別に10頭入れ脱脂綿で蓋をする(図1)。
  2. 虫体直接浸漬法で検定を行う場合には、ナイロンゴース端を下側にし供試虫を集めた後、展着剤を添加した蒸留水で所定濃度に希釈した供試薬剤にピペットごと2cmほど浸漬する。ゴースについた余分な薬液をふき取り、対極の脱脂綿を蒸留水で湿らせシーリングフィルムで封じた後、ゴース側を上にして25℃、16時間日長の恒温槽に保持し、浸漬24時間後(遅効性の薬剤は72時間後)に生死を調査する。また、ドライフィルム法で検定を行う場合は、ナイロンゴースで覆った後、アセトンで希釈した薬液をピペット内壁に15μリットルほど滴下して、ピペットを斜めにし回転させながら内壁全体に薬剤皮膜を作る。その後ピペット内にヒメハナカメムシを入れ、同様に調査する。なお、調査する際にパスツールピペットはガラス厚が薄いので内部が観察しやすい。タイリクヒメハナカメムシを用いた本法による検定結果を表1に示す。
  3. IGR剤は脱皮時に作用するので幼虫での検定を行う(表2)。
  4. 本法はIOBC(国際有害動植物生物的防除機関)で示された検定法に比べ方法が簡単で、安価、省スペースで一度に大量の検定ができる。

[成果の活用面・留意点]

  1. アザミウマ類の検定に用いることもできる。その際には餌として寄主植物の葉片を入れる。
  2. ドライフィルム法で薬剤皮膜を作成したピペットは−20℃に保持すれば、数ヶ月間保存できるため検定に先立ち、大量に検定器具の準備ができる。
  3. 検定に使用したピペットは洗浄後再使用できる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :総合的病害虫管理技術の確立(天敵に対する各種農薬の影響)
予算区分 :国補(植物防疫事業関係)
研究期間 :2000〜2001年度
研究担当者 :大野 徹、小木曽正敏
発表論文等 :大野(2000) 植物防疫54(7):290-294.

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