土壌の可給態りん酸・交換性塩基含量の簡易な未来予測


[要約]

土壌の可給態りん酸、交換性石灰・苦土・カリの増減を、資材投入量と作物による吸収量から簡易に予測する推定式を作成し、視覚的に土壌の変化が捉えられるように土壌マップソフトに組み込んだ。

[キーワード] 可給態りん酸、交換性塩基、未来予測、推定式
[担当] 愛知農総試・経営環境部・環境化学研究室
[連絡先] 0561-62-0085
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

今後の環境保全型農業の展開のためには、日常的に行っている肥培管理が、近い未来に土壌にどのような変化をもたらすかを把握することが必要である。その一環として、近い未来の土壌中の可給態りん酸、交換性石灰・苦土・カリの状況が把握できる簡易な予測式を作成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 現在の土壌中の可給態りん酸、交換性石灰・苦土・カリの分析結果、一作ごとの投入資材の成分量、作物による吸収量から、一作後の可給態りん酸、交換性石灰・苦土・カリ含量の状態が推定できる(式1)。
  2. 表1の消長係数は、3種類の土壌(中粗粒灰色低地土、細粒黄色土、厚層多腐植質黒ボク土)を用いて、りん酸、石灰、苦土、カリの施用水準を3段階とした長期試験(1982〜1989年、1998〜2000年)の実測値と式1による推定値が最も良く当てはまる数値として求めた(表1)。
  3. 式1を繰り返し計算することにより、何作か後の可給態りん酸、交換性石灰・苦土・カリの状態をシミュレーションできる(図1)。
  4. 上記の予測式を土壌マップソフト(平成10年度 成果情報)に組み込み、簡易な操作(作付け作物、施肥量、改良資材の種類・量を選択後、表示させたい土壌の化学性と何年後かを選択)で視覚的に土壌塩基類の変化を捉えられるようにした(図2)。
  5. 予測式に関わるパラメータ(消長係数、かんがい水由来のりん酸及び塩基量、作物による吸収量)の変更、及び対象作物、改良資材等の追加ができる。
  6. 予測は、1年単位としたが、生産調整水田では、2年ローテーションの場合2年単位、3年ローテーションの場合3年単位とした。
  7. 予測結果をフィードバックさせ、肥培管理(施肥量、改良資材の種類・量)を変更することにより、新たに予測が可能。この操作は、予測結果が、その地域として一番妥当な値となるまで、図2の操作画面で無限に行える。

[成果の活用面・留意点]

  1. 未来を見据え、計画的な土壌改良ができる。
  2. 作物による吸収量、かんがい水の成分等に実測値を用いず、平均的な値を用いた簡易な予測方法であるため、長期の予測は信頼性に欠ける。3年から5年を目処に土壌分析を行い、修正することが必要。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :有機質資源施用基準設定調査
予算区分 :土壌機能増進事業
研究期間 :1999年〜2003年度
研究担当者 :北村秀教
発表論文等 :北村秀教(2001)愛知農総試研報 33  投稿中

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