凍結乾燥法は家畜ふん堆肥の品質評価において好ましい前処理である


[要約]

家畜ふん堆肥を凍結乾燥法により処理すれば、加熱乾燥法よりアンモニアや低級脂肪酸の損失が少ない。コマツナ発芽試験法においても未乾燥試料に近い生育阻害結果が得られるため、凍結乾燥法は堆肥の品質評価において有効な前処理法である。

[キーワード] 堆肥、凍結乾燥法、コマツナ発芽試験法、低級脂肪酸、アンモニア
[担当] 三重科技・農研・循環機能開発グループ、生物機能開発グループ
[連絡先] 0598-42-6360
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

一般に、家畜ふん堆肥の品質を評価する場合、40〜50℃で乾燥させた試料または風乾物が用いられている。乾燥中に揮発しやすい成分の分析については非乾燥試料を用いることが推奨されているが、試料保存の難しさや成分の不均一性の点で問題がある。一方、凍結乾燥法は一般に試料乾燥中の成分変化が小さいので、堆肥を分析する場合に有効な前処理となる可能性がある。そこで、堆肥の揮発性成分の保持や植物に対する安全性評価において、加熱乾燥法と比較した場合の凍結乾燥法の優位性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 50℃の加熱乾燥法で、豚、牛および鶏のふん並びにそれぞれの堆肥を乾燥すると、アンモニア、低級脂肪酸ともに著しく減少する。しかし、凍結乾燥法では2成分とも非乾燥試料とほぼ同等の測定値が得られる。(図1
  2. 家畜ふんおよび堆肥の成分を水で抽出し、コマツナの発芽試験を行うと、加熱乾燥試料は非乾燥試料より根が伸長し、生育阻害が小さく評価される場合が多い。凍結乾燥試料では、加熱乾燥試料より阻害が大きく、非乾燥試料に近い結果が得られる。(図2
  3. コマツナの発芽試験において、根の伸張阻害の大きい抽出液はECや低級脂肪酸が高い傾向がみられ、これらが阻害要因の一部となっている可能性がある。(表1
  4. 以上より、揮発性の高いアンモニアや低級脂肪酸を保持するための堆肥の乾燥法として、凍結乾燥法が有効である。凍結乾燥物を粉砕すれば、成分が均一な試料が得られるとともに、容量が少なくなり保存が容易となる。さらに、加熱乾燥により損失する成分は、植物の安全性評価や肥効評価などに影響するため、凍結乾燥法は堆肥の品質評価上好ましい前処理法である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 著しくアンモニア含量の高い試料(乾物当たり0.8%以上)においては、凍結乾燥法によっても多少のアンモニアの減少を招く場合があるので、精密な測定値を要する場合は非乾燥試料を分析することが望ましい。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :畜産に係るエコシステム創出に関する技術開発
予算区分 :国庫委託
研究期間 :2000〜2004年度
研究担当者 :藤原孝之、原 正之、村上圭一

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