鶏ふん堆肥における尿酸分析による可給態窒素量の迅速推定法


[要約]

鶏ふん堆肥の可給態窒素量は堆肥中の尿酸態窒素量と高い相関関係にあり、尿酸量を測定することで迅速に推定が可能である。なお、尿酸の分析は、炭酸リチウム溶液−水抽出の上、臨床検査試薬を用いた酵素法により、簡易な定量が可能である。

[キーワード] 鶏ふん堆肥、尿酸、可給態窒素、ウリカーゼ、
[担当] 三重科技・農研・生物機能開発グループ、循環機能開発グループ
[連絡先] 0298-38-6361
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

鶏ふん堆肥は一般的に窒素含有量が高く、有機肥料としての利用が見込まれることから、窒素の肥効を迅速かつ正確に評価する必要がある。新鮮鶏ふん中には全窒素の40〜70%に相当する尿酸態窒素が含まれており、尿酸は堆肥化あるいは土壌中でウリカーゼ生産菌により急速にアンモニアに分解されることから、堆肥中の尿酸の残存量が窒素の肥効発現に大きく関与していると推察される。そこで、堆肥中の尿酸量と可給態窒素量との関係について検討し、併せて尿酸の簡易定量法を開発した。

[成果の内容・特徴]

  1. 排泄直後の新鮮鶏ふん中の尿酸態窒素量は、25〜28mg/1g堆肥(D.M.)であり、全窒素量に対する割合は47〜53%であった。堆肥化段階で尿酸は急速に分解を受け、アンモニアガスとして揮散する。このため、堆肥中の全窒素量と尿酸態窒素量には正の相関が認められる。また、堆肥化日数が長く、全窒素量が30mg/g以下となった堆肥では、尿酸態窒素はほとんど検出されない(図1)。
  2. 堆肥中の尿酸態窒素量と同試料を畑条件、30℃4週間インキュベーションし、得られる可給態窒素量との間には高い正の相関(Y=1.27X+1.29 (r=0.986))があり、堆肥中の尿酸態窒素を測定することで可給態窒素量が高精度に推定できる(図2)。
  3. 肥料等からの尿酸抽出は、リン酸塩等の緩衝作用による炭酸リチウム溶液pHの低下を防止するため予め水抽出を行なうが、鶏ふん堆肥では直接炭酸リチウム溶液で抽出を行っても濾液pHの低下はほとんど起こらず、抽出量も定法と変わらない。このため、回収率を考慮した堆肥中の尿酸の抽出法は、0.4%炭酸リチウム溶液で2回抽出した後、水抽出を2回とする(図3)。
  4. 鶏ふん堆肥中の尿酸態窒素の分析法は図4に示した通りである。尿酸の定量は、酵素法(ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法)を採用し、市販の臨床検査用試薬を用いることで従来法であるリンタングステン酸法に比べ簡易かつ迅速な定量が可能である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 堆肥抽出液の腐植による着色の影響は、被検液に第1試薬のみを添加し、得られた吸光度にボリューム補正として0.675を乗じた値を検体ブランクとして測定値から差し引くことで排除できる。
  2. 酵素試薬添加後の加温時間は、第1試薬、第2試薬とも5〜20分までの範囲であれば測定値に影響しない。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :畜産に係るエコシステム創出に関する技術開発
予算区分 :国庫委託
研究期間 :2000〜2004年度
研究担当者 :原 正之、村上圭一、藤原孝之

目次へ戻る