神奈川県内のハウス乾燥処理牛ふん堆肥の特性


[要約]

神奈川県内でハウス乾燥処理によって製造された牛ふん堆肥は、C/N比が20以下であり、カリウム含有量が多い傾向にあった。乾物あたりの養分含有率には、5〜6月、8〜9月の2採取時期で違いは認められないが、8〜9月生産堆肥に比較して5〜6月では未熟なものが多い可能性がある。

[キーワード]  ハウス乾燥、牛ふん堆肥、成分特性、季節変動、発芽試験
[担当]  神奈川県農総研 農業環境部
[連絡先]  0463-58-0333
[区分]  関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]  技術・参考

[背景・ねらい]

1999年に「家畜排泄物の管理の適正化および利用の促進に関する法律」が制定され、今後、この法令に基づいた方法での家畜ふんの堆肥化処理、有効利用が推進される。
この法令に則した家畜ふんの処理法として神奈川県内では、牛ふんについては、プラスチックハウス内に生ふんを広げ、天日や装置による撹拌、送風等により乾燥発酵させるハウス乾燥による処理法が普及してきている。
本研究では、県内でハウス乾燥処理によって生産されている牛ふん堆肥の無機成分特性および腐熟度の季節変動について解明する。

[成果の内容・特徴]

  1. 神奈川県内でハウス乾燥方式によって牛ふん堆肥の製造をおこなっている農家21軒から5〜6月、8〜9月の2期に合計87点の製造過程の試料(ハウス乾燥処理物及び製品)を採取し、試験をおこなった。
    なお、乾燥処理物*1及び製品*2は以下のように定義した。
    *1   生ふんをハウス内に広げ、天日や装置による撹拌送風等により乾燥発酵させたもの(農家により戻し堆肥、おがくず等副資材を添加)。
    *2   ハウス乾燥処理物を更に堆積発酵させたもの(農家が販売対象としているもの)。
  2. 供試した堆肥の主要成分含有率の平均値は、窒素2.5%、リン酸2.2%、カリ3.8%で、窒素、リン酸含有率と比較し、カリ含有率が高い傾向にあった。C/N比は、ほとんどのもので20以下であった。ナトリウム含有率は0.5%前後と低い値であった。
    また、乾物あたりの養分含有率は、5〜6月、8〜9月の2採取時期で違いは認められなかった(表1、参考値を表2に示す)。
  3. 堆肥化処理時の含水率は、8〜9月採取試料に比較して5〜6月で高かった。これは、両時期の天候による水分蒸散量の違いが原因と考えられる(表3)。
  4. 堆肥抽出液による発芽率及び根生育では、8〜9月採取堆肥に比べて5〜6月では、いずれも低下し、未熟堆肥が多い傾向にある(表4)。
    この理由としては、前項の含水率の結果にみられるように、8〜9月は、水分の蒸散が良好に進行し、良好に堆肥化が進行したのに対し、5〜6月は、水分蒸散量の不足のため水分過剰な状態で推移したこと、また、5〜6月は、堆肥需要期後で残存部分が未熟堆肥であったこと等が考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. ハウス乾燥処理によって製造された牛ふん堆肥は、肥料効果のある堆肥であるため、施用にあたっては、供給される肥料成分を考慮して使用する。
  2. ハウス乾燥処理によって製造された牛ふん堆肥は、カリウムが多い傾向にあるため、多量使用時には、元肥のカリウム施肥量を削減する。
  3. 製品の熟度は、季節により違いがあるため、施用にあたっては注意が必要である。

[具体的データ]

表3 牛ふんハウス乾燥処理物及び製品の含水率変化 

表4 牛ふんハウス乾燥処理物及び製品の発芽試験結果

注)根生育度の測定法
  以下の4つに分けそれぞれに該当するコマツナ種子粒数を計数し、表記の式によって算出した。
 根生育指数(3)...正常に発芽し、対照区(水)の最長根の1/2以上生育している。
 根生育指数(2)...正常に発芽しているが、根長が対照区(水)の最長根の1/2以下。
 根生育指数(1)...発芽はしているが、根がほとんど伸長していない。 根生育指数(0)...発芽していない。
 根生育度=(根生育指数×各根生育指数の個体数)/(3×総播種粒数)×100 
 水による栽培区を対照として補正した。

[その他]

研究課題名 :有機性廃棄物の肥料化技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2000年度
研究担当者 :竹本稔、藤原俊六郎、川村英輔**神奈川県畜産研究所)
発表論文等 :1)竹本・川村・藤原(2002)土肥誌 73(2):

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