被覆尿素を利用した苗箱施肥法による「コシヒカリ」の穂肥の省力化


[要約]

溶出特性の異なる2種類の被覆尿素を混合し、育苗箱に層状に施用することによって、本田への穂肥を省略し、安定生産できる「コシヒカリ」の苗箱施肥法を確立した。

[キーワード] コシヒカリ、被覆尿素、苗箱施肥法、穂肥、土壌肥料
[担当] 福井県農業試験場・生産環境部・土壌環境研究グループ
[連絡先] 0776-54-5100
[区分] 関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

「コシヒカリ」の穂肥施用は、梅雨時期のため作業適期を逸しやすく、また降雨による成分流亡の機会が高い。また施肥作業の労働負担も大きいため、肥効調節型被覆肥料を用いた全量基肥施肥法を推奨してきた。しかし、基肥と穂肥の合量を一度に施肥するため、移植時の施肥量が多くなり、肥料補給作業が多忙となる現状もある。施肥田植え機を保有しない農家でも取り組み易く、育苗センターにおいて対応可能な苗箱施肥法の確立を図る。

[成果の内容・特徴]

  1. 苗箱施肥法は育苗床土に、本田で稲体が必要とする窒素成分を通常被覆尿素で与える。ここでの技術は、LPSS100の他LPS120を1:2で混合し(区名:苗箱混合)、これを床土に層状に施用し、播種後慣行と同様に育苗し移植する方法であり、慣行栽培の穂肥に相当する窒素成分のみ育苗箱に施用する方法である(図1)。
  2. 播種後から移植までの積算地温や生育時期ごとの積算地温は、実施年度による違いは小さく、ほぼ安定している(表1)。
  3. 被覆尿素の種類によって溶出開始時期や溶出速度が異なるが、それぞれの肥料溶出パターンは年次ごとの差はなく(図2略)、また、苗箱混合は全量基肥施肥したLPSS100と類似した溶出パターンである(図2)。
  4. 生育時期ごとの窒素吸収量は、苗箱混合が全量基肥と極めてよく一致する。(図3
  5. 苗箱混合は、収量では慣行より若干劣るものの倒伏程度は小さく、玄米のタンパク含有率や乳白粒割合が低くなり品質が向上する。これらは全量基肥施肥法と同様である(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. この苗箱施肥法は、本田での穂肥施肥作業を省略するものであり、基肥は慣行どおり施用する。
  2. 苗箱への施用量は慣行栽培での穂肥窒素量に準じ、さらに苗の使用枚数を勘案する。
  3. 育苗管理は慣行に準じるが、極端な高温や低温の管理では被覆尿素の溶出開始時期が変動するおそれがある。また床土の量が少なくなるため、育苗後半の水管理に注意する。
  4. 燐酸・加里の不足分は別途土づくりの際などに補給しておく。
  5. 苗箱施肥法は全量基肥施肥法と同様に環境にやさしい施肥技術である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :水稲全量基肥施肥法実用化技術確立事業
  水稲栽培における被覆肥料の効率的施肥技術確立試験
予算区分 :県単
研究期間 :1996〜2001年度
研究担当者 :西端善丸、牧田康宏、伊森博志
発表論文等 :なし

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