圃場採取水中のイネ白葉枯病菌をモニタリングするにはPCR法がよい
[要約]
圃場採取水に浮遊するイネ白葉枯病菌を検出する場合、PCR法は死菌体を誤って検出する危険性は低く、モニタリング法としてはファージ法より優れている。
[キーワード] |
イネ白葉枯病菌、特異的ファージ、PCR |
[担当] |
石川農研・生産環境部・病理昆虫科 |
[連絡先] |
076-257-6978 |
[区分] |
関東東海北陸農業・北陸・生産環境 |
[分類] |
科学・参考 |
[背景・ねらい]
イネ白葉枯病菌は水媒伝染性の病原菌であるため、用水中の挙動を解明することが発生予察上重要である。これまでの白葉枯病菌のモニタリング法であるファージ法は、直接的に病原細菌を計数する方法ではないので、細菌数とファージ数の増減には時間差があると想定される。一方、PCR法は病原細菌の遺伝子を検出する技術であるため、死滅後も遺伝子が残ればその存在を誤認する危険性がある。そこで水中に浮遊する白葉枯病菌をモニタリングする際の両法の問題点を比較検討する。
[成果の内容・特徴]
- 白葉枯病発病圃場からの採取水中に懸濁した病原細菌のPCR法による検出限界は、蒸留水中の検出限界(4×101cfu/ml)とほぼ同等であり(図1)、採取水に含まれる物質の影響はほとんどない。
- 白葉枯病菌を混合し静置する場合、PCR法では、蒸留水中からはいずれの温度でも1ヵ月以上継続して検出されるが(図表略)、特異的ファージを大量に含む圃場採取水では、25、37℃の高温区で遅くとも5日後には、菌濃度は検出限界以下になる(図2)。15℃で7日後、5、10℃の低温区でも12日後には検出限界以下になることから(図3)、圃場採取水中において死菌の遺伝子残渣を誤って検出する危険性は少ない。
- ファージ法では、PCRでの検出が認められなくなるとともにファージ数の減少が確認されるが、その程度は低温であるほど緩慢であり、細菌数とファージ数の減少には時間差が大きくなることから(表1)、菌濃度を誤認する可能性がある。これは低温区ではファージ自体の安定性が高く、寄主細胞である白葉枯病菌がなくとも活性が低下しにくいためと考えられる。
- 以上のことより、
圃場採取水に浮遊する白葉枯病菌をモニタリングするにはファージ法よりもPCR法が適していると考えられる。
[成果の活用面・留意点]
- 植物体に感染成立するための水中菌濃度、植物体との接触時間等を明らかにする必要がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名 |
:イネ白葉枯病診断及び防除技術の確立 |
予算区分 |
:国補(植物防疫) |
研究期間 |
:1998〜2002年度 |
研究担当者 |
:安達直人 |
発表論文等 |
:なし |
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