タンパク質由来の苦味を低減させるマイタケ酵素液の製造法


[要約]

マイタケの抽出液を疎水クロマトグラフィー用充填剤に吸着・溶出させることにより、タンパク質から生じる苦味を分解する酵素液が効率的に製造できる。

[キーワード] マイタケ、苦味、分解酵素
[担当] 新潟農総研食研セ・園芸特産食品科
[連絡先] 0256-52-3240
[区分] 関東東海北陸農業・北陸・流通加工
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

牛乳、卵、ダイズなどは、各種発酵食品、調味液等に利用されているが、タンパク質由来の苦味が品質上、問題になる。一方、マイタケの生産・出荷では、製品整形作業の際に切れ端が10%程度生じ、その有効利用が課題となっている。そこで、マイタケの切れ端部分から、タンパク質由来の苦味を低減する酵素(アミノペプチダーゼ)液を効率的に製造する方法を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. マイタケ凍結乾燥粉末20gに、500mM硫安を含む緩衝液800mlを加えて混ぜ、吸引ろ過して抽出液を得る。抽出液を疎水クロマトグラフィー用充填剤600mlに添加して、ゆっくりと1時間かき混ぜる(4℃)。混合液をカラムに充填し、100mM硫安を含む緩衝液3倍量(ゲル容量)を流して洗浄する。最後に、硫安を含まない緩衝液2倍量(ゲル容量)を流すと、苦味低減酵素液が得られる(図1)。
  2. 本酵素液には抽出液の苦味除去酵素活性の約14%が含まれている。
  3. 本酵素液は、65℃で最大の効果を発揮し、弱酸性から弱アルカリ性(pH 6.0〜10.5)の範囲で安定である。
  4. 本酵素液をタンパク質分解苦味溶液に添加すると、苦味は7時間程度で低減する。ダイズタンパク質分解苦味溶液では閾値以下に、カゼイン分解苦味溶液では1.2%グリシルフェニルアラニンに相当する苦味強度になる(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 酵素液には、苦味低減酵素の他にプロテアーゼ等のタンパク質分解酵素が含まれる。
  2. 本酵素液は凍結保存する必要がある。

[具体的データ]



図1 苦味低減酵素液の製造法

[その他]

研究課題名 :特産野菜・種実等の高付加価値加工技術の開発
予算区分 :県単経常
研究期間 :2000〜2002年度
研究担当者 :西脇俊和、吉水聡
発表論文等 :1) 西脇ら「アミノペプチダーゼ及びその製造法」、特開2001-169779
 2) Nishiwaki and Hayashi (2001) Biosci. Biotechnol. Biochem., 65(2),: 424-427
 3) Nishiwaki et al. (2002) J. Biosci. Bioeng., 93(1) : (in press)

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