水稲品種「こしいぶき」の効率的な細胞培養技術


[要約]

水稲品種「こしいぶき」の種子からのカルス誘導、懸濁培養による大量増殖、植物体再分化を効率良く行うことができる。

[キーワード] 水稲、こしいぶき、カルス誘導、懸濁培養、大量増殖、植物体再分化
[担当] 新潟農総研・バイオ研究部
[連絡先] 0258-35-0047
[区分] 関東東海北陸農業・北陸・生物工学
[分類] 科学・普及

[背景・ねらい]

水稲品種「こしいぶき」は、品質・食味がコシヒカリ並に優れる早生種であるため、品種改良のための育種素材としても有用である。そこで、本品種を材料に用いたバイオテクノロジーによるイネの品種改良を効率化するため、「こしいぶき」の細胞培養技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 種子カルス誘導培地の基本培地にはMS培地が適する。表面殺菌した玄米からカルスが誘導される割合は約90%である(表1図1)。
  2. 玄米から誘導されたカルスは、窒素源を1/2濃度にしたR2培地(1/2R2培地)を用いて振とう培養することで、大量増殖ができる(図2)。7日間の培養でカルスの容積が約5倍になる。
  3. 再分化誘導培地と再分化培地の基本培地にはDKN培地が適する。カルスから緑色植物体が再分化する割合は約60%、アルビノについては2%程度である(図3)。
  4. 各培養過程によって適する基本培地は異なり、各過程で用いる培地の組成と培養条件は表2に示す。

[成果の活用面・留意点]

  1. 「こしいぶき」のカルス誘導、カルスの大量増殖、再分化が容易となり、バイオテクノロジーによるイネ育種に利用できる。
  2. 本技術は品種改良、並びに農業教育機関におけるバイテク実習に活用できる。

[具体的データ]



図1 こしいぶきの種子カルス(MS培地)



図2 懸濁培養効率に及ぼす基本培地の影響



図3 カルスからの植物体再分化

[その他]

研究課題名 :水稲新品種育成のための花粉培養法の確立
予算区分 :県単特別
研究期間 :1996〜2000年度
研究担当者 :大源正明、橋本憲明、星洋介、水野麻里
発表論文等 :なし

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