シクラメン品質評価基準の重要度に関する市場間差異


[要約]
AHPの計算法を用い、鉢物取引の多い異なる地域の卸売市場間でのシクラメンの品質評価差異を分析した。中京の市場では外観品質の重要度が0.519と高い。一方、関西の市場は外観品質が0.382に対し、日持ち性が0.400の重要度を示した。これは生産者等による市場の評判と等しい。

[キーワード]シクラメン、品質評価、AHP、卸売市場

[担当]三重科技セ・農業研究部・経営植物工学グループ、園芸グループ
[連絡先]電話 0598-42-6356
[区分]関東東海北陸・経営部会、花き部会
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 シクラメンの品質評価は地域や市場によって異なると指摘されているが、その品質評価要素の重要度などについて計量的分析が行われていない。そこで、専門的知識を持つ集団の意思決定において勘や経験などの判断を比例尺度として解析できるAHP(階層意思決定法)の計算法を用いて、シクラメン品質評価要素の重要度を数値解析する分析モデルを策定し、生産農家が出荷する卸売市場間の差異を明らかにすることを通じて、外観、日持ち、流行対応など卸売市場の要求やその重要度に見合ったシクラメンの栽培技術導入の基礎資料とする。

[成果の内容・特徴]
1. 外観品質、日持ち性、流行の重要度比較では、中京B市場における外観品質が0.519と高い一方、関西A市場では日持ち性が0.400と高い。この結果は、各卸売市場に対してシクラメン生産者が持つ感覚や地域における評判と一致する。
2. 外観品質を構成する要素では、B市場における花の重要度が0.205と高く花数などを重視している一方、A市場の花は0.074と低い。A市場では株全体の重要度が0.142と花の値より高く、株全体の要素を構成する株の硬さ・しまりやバランスが重視されている。
3. 日持ち性についてみると、A市場では温度変化適応性が0.110、購入後の栽培方法表示も0.110と高い数値になっている。B市場でも温度変化適応性が0.099と最も高く、次いで購入後の栽培方法表示が0.070を示している。
4. 流行では、B市場が0.226、A市場が0.228とかなり類似した重要度になっており、両市場とも新品種の希少性を中心に評価が行われている(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 三重県のシクラメン生産者が出荷する基幹2市場を選択し、分析を行ったものである。
2. 花き卸売市場に出荷される5号鉢シクラメン(普通種、F1)の評価について比較分析したものである。
3. 調査時に提示したシクラメン品質評価の分析モデル前提条件に留意する必要がある。
(1) 日持ち性は、外観品質から評価しにくい栽培管理に由来する要因、及び消費者購入後のシクラメン管理に関する要因に限定した。
(2) 花の色評価は、好みによる評価を排除するため「流行色」及び「発色・艶の良さ」のみを要素に用いた。また、シミ・よごれ・黄化、傷み、病害虫、奇形花などの障害は「評価以前の問題」として評価要因から除外した。
(3) 品種による差異は、外観品質、日持ち性、流行で評価できると捉え、評価基準から除外した。また、シクラメンの植物体「鮮度」は、外観品質から判断することとした。



[具体的データ]


[その他]
研究課題名:計量的アプローチによるシクラメンの品質評価
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:大泉賢吾、鎌田正行

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