灰分測定から見る堆肥の簡易腐熟判定


[要約]
生産現場における堆肥化施設の入口部分と製品堆肥の灰分を測定することにより、有機物分解割合を計算し、腐熟の程度を概ね判定することができる。なおその値は、酪農であれば30%がひとつの目安になる。

[キーワード]畜産環境、家畜ふん尿、堆肥、腐熟度、灰分

[担当]栃木畜試・畜産技術部・畜産環境研究室
[連絡先]電話 028-677-0015
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 肥料取締法の改正により堆肥の成分等の表示が義務づけられ、「成分分析と表示」に関しては一歩前進した感があるが、こと「品質」に関しては判断・評価・考え方など様々な声が現場から上がっている。本県では堆肥共励会を開催し、14項目の基準で総合的に評価しているが、より単純な方法で堆肥の品質を容易に判断する手法を求める声は強い。そこで、家畜ふん堆肥の品質向上と流通促進に資するために、よりわかりやすい品質判断手法を提案する。

[成果の内容・特徴]
1. 堆肥化開始時の調整済み生ふんと製品堆肥の両方の灰分を測定し、灰分量は不変であるという前提のもと、式1の手順で計算する。特徴は以下の3点である。
(1)堆肥化開始時も測定するので、原材料や副資材混合割合の違いを考えなくて良い。
(2)堆肥中には由来の異なる易分解性有機物が混在する可能性がある(図1)ので、有機物(灰分測定による強熱減量)そのものだけを測定する。
(3)灰分測定という一般的な分析手法を用いるので、意味合いが理解しやすい。
2. 水分調整済乳牛ふんを500Lコンテナ内で堆肥化させた際の有機物分解割合の推移を見ると、約50%分解が進行した時点で乾物分解率や品温等が安定し、完熟とみなせる。
さらに有機物分解割合が50%に至るまでの季節別の推移を見ると、夏場では完熟となる期間を経過しても、冬場は30%程度しか分解が進行しない。(図2
3. 酪農家の生産した堆肥を測定したところ、有機物分解割合の平均は21.8%(n=25)、スラリー乾燥処理4点を除いた平均は24.5%であり(図3)、現在のところ暫定的に30%以上で有れば完熟であると評価できると考えている。

[成果の活用面・留意点]
1. 畜産農家が自ら生産した堆肥の有機物分解割合を把握することで、腐熟程度の確認や利用促進のPRに利用できる。なお灰分測定は、外注すれば数千円の費用がかかる。畜産草地研・家畜生産管理部から簡易な灰化法も報告されているが、現場指導員の負担を軽減するために、畜試はじめ電気マッフル炉を配備する県機関の協力で機器を利用させてもらう方向で進めていきたい考えである。
2. 数値のばらつきを除くため、サンプリングには注意を要する(特に調整済み生ふん)。
さらに、できれば充分な粉砕、反復ができると良い。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:家畜ふん堆肥の品質因子に関する研究
予算区分:県単
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:脇阪浩

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