和牛雌牛肥育牛における血中ビタミンA値の推定


[要約]
和牛雌肥育牛の肥育後期(肝臓中の貯蔵ビタミンAが枯渇状態)においては、体重当たりのビタミンA摂取量と血中ビタミンA値の間に高い相関があり、血中ビタミンA値(IU/dl)は2.5×体重当たりのビタミンA摂取量(IU)で推計できる。

[キーワード]肉用牛、和牛雌牛肥育牛、ビタミンA、肥育後期

[担当]三重科技セ・畜産研究部・大家畜グループ
[連絡先]電話 0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 三重県は古くより高品質なブランド牛肉の産地として名が知られている。しかし、その生産基盤は弱く、良い質のものを多く生産するためには肉質を高品質なものに斉一化する必要がある。本県のブランド牛肉生産農家における飼料給与方法は古くからビタミンA制御方式であるが、これは経験によるもので技術として確立されたものではないため支障も生じている。そこで、和牛雌牛のビタミンA制御肥育技術を確立するため、給与飼料中のビタミンA量と血中ビタミンA値について検討する。

[成果の内容・特徴]
   TMR給与方式(試験1)と濃厚飼料と粗飼料の分離給与方式(試験2、3)による3回の和牛雌牛肥育試験(肥育前期24週、中期24週、後期36週)において、肥育期間中の血中ビタミンA値(試験1で8週毎、試験2、3で4週毎)と給与ビタミンA量を検討し、得られた成果である。
1. 肥育後期の血中ビタミンA値は計測前4週間のビタミンA摂取量とよく似た動きをし、両者の間には有意な相関がある。(図1表1
2. 肥育後期の血中ビタミンA値と計測前4週間の体重当たりビタミンA摂取量との間にはより高い相関が認められる。(表1)。
3. 後期に入るまでに血中ビタミンA値が20IU/dlまでの低下が認められた時に(試験3)、血中ビタミンA値と体重1kg当たり摂取量の間に高い相関が得られる。(図2図3
4. 肥育中期のビタミンA低減により肝臓中の貯蔵ビタミンAの極端な低下が想定される時に、血中のビタミンA値は摂取するビタミンA量に左右され、体重1kg当たりビタミンA摂取量から次式で推計できる。
  血中ビタミンA値=2.438×体重1kg当たりビタミンA摂取量+1.832
5. 実用上は2.5×体重1kg当たりビタミンA摂取量で推計可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. この推計式はビタミンA制御肥育を実施した和牛雌肥育牛の肥育後期で血中ビタミンA値が50IU/dl以下の時に適用可能なものである。ただし、当部においては同様の和牛去勢牛においても推計可能であった。
2. ビタミンA摂取量は飼料添加剤(ビタミンAを30,000IU/g含むもので、他にビタミンD3およびビタミンEを含む)の添加量と給与濃厚飼料中のトウモロコシのβ-カロチン量(標準飼料成分表のカロチン量)から求める。


[具体的データ]

 
 

[その他]
研究課題名:混合飼料給与による和牛雌牛肥育技術の確立・ビタミンA制御による和牛雌牛肥育技術の確立
予算区分:県単
研究期間:1995〜2003年度
研究担当者:山田陽稔、榊原秀夫、松井靖典、平岡啓司、森昌昭

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