ニホンナシ「幸水」のハウス栽培における変形果発生を軽減する温度管理


[要約]
ニホンナシ「幸水」のハウス栽培におけるセイヨウナシ型、有てい果等の変形果は、開花始めから満開後30日までの日中の高温により発生するため、開花始めから満開後30日まで換気を早めに行い、日中21〜24℃で管理することによって、変形果の発生を軽減できる。

[キーワード]ニホンナシ、幸水、ハウス栽培、日中の高温、変形果

[担当]栃木農試・園芸技術部・果樹研究室
[連絡先]電話 028-665-7143
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 ニホンナシ「幸水」のハウス栽培では、露地栽培に比べて果形が縦長になりやすく、セイヨウナシ型(以下ヨウナシ果)や有てい果等の変形果が発生し、果実等級を下げる原因になっている。そこで、開花始めから満開後30日間の温度と変形果発生との関係を解明し、防止技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 開花始めから満開後30日までのハウス内の昼温が29〜32℃の高温になると、変形果発生率が85〜90%と高く、特にヨウナシ果、有てい果の発生が多く、症状の重い果実が多くなる。昼温が21〜24℃で管理すると変形果率は50〜53%と低くなる。(表1図1写真1)。
2. 夜温は 3〜15℃の範囲内では、変形果の発生に及ぼす影響は認められない(表1写真1)。
3. 条溝果、傾き果、偏円果は、処理による一定の傾向はみられない。収穫盛は、昼低温処理すると高温処理に比較して数日遅くなる(表1)。
4. 開花始めから満開後30日までの間では、開花始めから満開後10日までの高温の影響が大きい(表2)。
5. 成熟期におけるヨウナシ果と正常果の赤道部およびこうあ部の果肉細胞の大きさは同じであり、こうあ部が細くヨウナシ果になるのは、果肉細胞が小さいためではなく、果肉細胞数が少ないためと考えられる(データ省略)。
6. ニホンナシ「幸水」のハウス栽培では、開花始めから満開後30日まで、早めの換気を行い、日中21〜24℃で管理することによって、変形果の発生を軽減できる。

[成果の活用面・留意点]
1. ハウス栽培における花の表面温度は、日中日射量が多くなると、気温より高く推移する。このため気温以上に植物体の温度が高くなるので、換気を早めに行う。
2. 簡易デンプン分析法であるヨウ素比色法により、同時に多数の調査が可能である。
3. 根中デンプン含有率の適正範囲1〜4%は、「青島温州」に適用できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ハウス栽培ナシの果形向上技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:渡辺浩樹、金原啓一、小島耕一
発表論文等:1)渡邊・金原、小島(2003)栃木県農業試験場研究報告第52号
      2)渡邊・金原、杉浦ら(2003)園芸学会雑誌第72巻別冊1、P211

目次へ戻る