ニホンナシ「南水」の花芽かき取り処理による着果管理の省力化


[要約]
ニホンナシ「南水」において、花芽かき取り処理は、果実品質・収量に影響することなく効率的に開花数を制限でき、着果管理作業が省力化できる。また、作業可能な期間が長いので、計画的に作業を行うことができる。

[キーワード]ニホンナシ、南水、花芽かき取り、着果管理、省力化

[担当]長野南信農試・栽培部
[連絡先]電話 0265-35-2240
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 ニホンナシ「南水」では、強摘蕾処理による大幅な開花数制限が果実肥大促進と摘果作業の省力につながることが確認されている。しかし、摘蕾の作業適期は開花直前の短期間に限られる上、他の管理とも重なる忙しい時期であるため、現場ではえき花芽のみしか摘蕾しないの一般的である。そこで、「新高」等で行われている花芽かき取り処理が着果管理作業の省力化および果実品質・新梢発生に及ぼす影響を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 花芽かき取り処理は、骨格枝・予備枝・側枝先端のえき花芽をすべてかき取るとともに、短果枝花芽は各短果枝群あたり1芽を残しその他の花芽をかき取る。さらに、直上など不良着果部位の花芽をかきとる(図1)。
2. 花芽かき取り処理は短果枝花芽もかき取るため、慣行法に比較して開花数が55〜72%と大幅に減少する。果実肥大及び収量への影響は認められず、慣行法と同等の果実生産が可能である(表1)。また、同一主枝に2年連続処理しても樹勢低下は認められない(データ省略)。
3. 花芽かき取り処理は、開花数制限に要する時間が強摘蕾処理の35〜60%と大幅に少なく効率的である。開花以降の作業時間は慣行区対比で、人工受粉83%、予備摘果67〜73%、仕上げ摘果70〜88%といずれも短くなり、全体の着果管理所要時間は72〜87%に短縮され省力化が図られる(図2)。
4. 側枝先端の1年生枝部分のえき花芽の扱いについて、かき取り処理は摘蕾処理に比べ新梢発生が多くなり短果枝の着生が少なくなる傾向がある。また、花芽をかき落とした跡から新梢・短果枝とも発生しない芽がやや多くなる(表2)。予備枝のえき花芽でも同様の傾向であるが実用上支障はないと考えられる(デ−タ省略)。
5. えき花芽のかき取り処理の新梢発生への影響は、2月中旬から開花6日前までの間で実施時期による差がないことから、実施可能期間は長く、せん定後から余裕をもって実施できる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 花芽かき取り処理を行う前提として、短果枝群の混み合いを防ぐために、せん定時に1短果枝群あたり2〜3芽程度に芽すぐりを行う。
2. 発芽期以降の花芽かき取り処理は、時期が遅くなるほど新生器官を多く落とすことになる。貯蔵養分の無駄な消耗をしないために、なるべく発芽前までに作業する事が望ましい。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:「南水」の栽培体系確立試験
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:小川秀和、泉克明、山近龍浩、船橋徹郎  

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