シアナミド剤と芽傷処理によるブドウ「ロザリオビアンコ」の発芽率向上


[要約]
ブドウ「ロザリオビアンコ」において、休眠期にシアナミド剤と芽傷処理を併用することにより、発芽・展葉が早まり、発芽率が向上して花穂数も増加する。

[キーワード]ブドウ、ロザリオビアンコ、シアナミド剤、芽傷処理、発芽率

[担当]愛知農総試・園芸研究部・落葉果樹グループ
[連絡先]電話 0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 ブドウ「ロザリオビアンコ」は、食味や外観が優れることから消費者の人気が高く、直売産地を中心に導入が図られている。しかし、「巨峰」等に比べて樹勢が強く、発芽率が低いうえ着花穂数が少ないなどの問題点がある。そこでブドウの休眠打破に用いられるシアナミド剤処理と発芽率向上のため行われる芽傷処理を併用し、その効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. シアナミド剤(商品名CX-10)のみの処理により発芽、展葉は無処理区より約10日早まり、発芽率も向上する。芽傷のみの処理では発芽促進効果はないが、発芽揃いは良く、発芽率も向上する。両者を併用することで、発芽、展葉は約8日早まり、発芽率は無処理区の51.9%に対して85.6%まで向上する(表1)。
2. 1新梢上の花穂数はいずれの区も無処理区と差はない。結果母枝あたりの花穂数は新梢発生数が増えることにより併用区で増加する。結果母枝あたりの花穂数、着穂新梢率はシアナミド剤処理した2つの区で増加または向上する傾向が見られる(表1)。
3. シアナミド剤単用の場合、結果母枝基部から4〜6節より先の部分の芽の発芽率が向上する。芽傷処理は節位に関係なく発芽率が向上する。通常発芽の悪い結果母枝基部の芽は、両処理を併用することで発芽率が大幅に向上する(図1)。
4. シアナミド剤と芽傷を併用処理した場合、果実品質は無処理と同等ないし優れる(表2)。
 以上のことから、樹勢が強く発芽や着穂の不良な「ロザリオビアンコ」に対して、シアナミド剤と芽傷処理を併用することで、発芽・展葉が早まり、発芽率が向上して花穂数も増加する。

[成果の活用面・留意点]
1. シアナミド剤は20倍処理の方が10倍処理より発芽率が優れる傾向があるため、登録された使用方法の低濃度にあたる20倍で処理する。また処理時期が遅れるほど効果が低下するので、12月上旬に処理する。
2. 芽傷処理は巨峰等で一般に行われている方法に準じ、樹液の流動が始まった時期に芽の直上部に、木質部まで達する程度の切り込み(傷)を入れる。
3. 本処理により着穂数が増え着房過多になると、糖度低下など品質への影響が生じることがあるため、適正着果量を守る。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:落葉果樹の品種適応性試験
予算区分:県単
研究期間:2001年度〜
研究担当者:上林義幸、江崎幾朗、瀬輔久
発表論文等:1)江崎・高瀬 (2003) 愛知県農業総合試験場研究報告35:123-130.

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