クワシロカイガラムシ3化地帯における有効積算温度による防除適期予測法


[要約]
静岡県のクワシロカイガラムシ3化地帯において、第1世代幼虫では1月1日を起点として発育零点10.5℃、有効積算温度287日度に達した日が、第2世代、第3世代では前世代のふ化最盛日を起点として発育零点10.8℃、高温発育停止点30℃、有効積算温度688日度に達した日が、実際のふ化最盛日と一致する。

[キーワード]チャ、クワシロカイガラムシ、有効積算温度、ふ化最盛日、予測

[担当]静岡茶試・病害虫研究室
[連絡先]電話 0548-27-2885
[区分]関東東海北陸農業・茶業、生産環境
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 チャの重要害虫であるクワシロカイガラムシの防除では、幼虫のふ化最盛日の2〜3日後が防除適期となるが、ふ化最盛日を予測または推定することはこれまで困難であった。そこで、アメダスの気温データを用い、武田(2001)および久保田(2000)により提案されている有効積算温度を用いたふ化最盛日の予測法の適合性を、静岡県のクワシロカイガラムシ3化地帯において検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 1月1日を起点として発育零点10.5℃、有効積算温度287日度に達した日を第1世代幼虫ふ化最盛日の推定値とした場合、実測日との差は、2002年は誤差1日以内(表1)、2003年では推定日の方がやや早かったが(表2)、推定日と実測日はよく一致する。
2. 前世代のふ化最盛日を起点として発育零点10.8℃、有効積算温度688日度に達した日を第2世代幼虫ふ化最盛日の推定値とした場合、実測日との差は、2002年、2003年ともに誤差1日以内であり(表1)、推定日と実測日はよく一致する。
3. 前世代のふ化最盛日を起点として発育零点10.8℃、高温抑制による発育停止点30℃、有効積算温度688日度に達した日を第3世代幼虫ふ化最盛日の推定値とした場合、実測日との差は、2002年は誤差1日以内(表1)、2003年は誤差3日以内であり(表2)、推定日と実測日はよく一致する。

[成果の活用面・留意点]
1. ふ化時期に降雨が続く場合は、高湿度によりふ化が抑制される。この場合、ふ化最盛日の予測日は、実測日より早まる可能性がある。
2. アメダスの気温データを用いた場合は、その地域の平均的なふ化最盛日を推定できるが、個々のほ場におけるふ化状況は、ほ場固有の微気象の影響を受けるので、アメダスによる推定日と実測日が一致しない場合もある。
3. 実際のふ化最盛日以前に最盛日を予測する場合、将来の気温データは平年値等のダミーを使用する。


[具体的データ]



[その他]
研究課題名:茶害虫クワシロカイガラムシの環境保全型防除技術の実用化
予算区分:国補
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:小澤朗人

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