茶園における新規性フェロモン剤を用いたハマキムシ類の防除


[要約]
新規性フェロモン剤(トートリルア剤)はチャハマキ雄成虫に対し、交信かく乱作用を示し、雌成虫との交尾阻害効果により、チャハマキ幼虫の密度を低下させる。その効果は化学合成農薬による慣行防除と同等以上で、傾斜地茶園にも適用できる。

[キーワード]チャ、チャハマキ、性フェロモン剤、傾斜地茶園

[担当]静岡茶試・病害虫研究
[連絡先]電話 0548-27-2885
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 チャハマキは茶の重要害虫であり、現在その防除は化学合成農薬により行われているが、化学合成農薬の使用を減らし、環境に配慮した防除体系の確立が望まれている。そこで、チャハマキの生物的防除資材として、複数の性フェロモン成分とした新しい性フェロモン剤(トートリルア剤)の効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 新規性フェロモン剤のチャハマキ雄成虫に対する誘引阻害率は87%以上であり、交信かく乱効果が認められる(表1)。
2. 新規性フェロモン剤のチャハマキ幼虫の密度抑制効果は、第1、第2世代および第4世代では化学合成農薬と同等かそれ以上の効果があり、実用性がある(表2)。
3. 平均11度の傾斜地茶園においても新規性フェロモン剤は、チャハマキに対し交尾阻害効果を示す(表3)。
4. 平均11度の傾斜地茶園における新規性フェロモン剤のチャハマキ幼虫の密度抑制効果は、傾斜の上部から下部まで安定している(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 新規性フェロモン剤はチャノコカクモンハマキに対しても効果があり、同時防除ができる。
2. 甚発生条件下や多発しやすい第3世代幼虫期に効果が低下することがある。その場合は他の防除手段を併用する。
3. 雄成虫に対する交信かく乱効果を監視するため、フェロモントラップによる調査を行うことが望ましい。
4. 集団茶園で処理するほど効果が安定する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:性フェロモン剤と微生物防除資材を用いたハマキムシ類の防除法の確立
予算区分:国補
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:西島卓也、小杉由紀夫
発表論文等:
1) 小杉(2001)関東東山病虫研報48:135-138
2) 小杉(2003)今月の農業48(6):47-52

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