胚珠培養で作出したユキヤナギとシモツケの種間雑種


[要約]
ユキヤナギ(Spiraea thunbergii Sieb.ex Blume)を種子親に、シモツケ(S. japonica L.fil.)を花粉親に用いて交配後、胚珠培養を行うと、桃色花色を持つ種間雑種が作出できる。

[キーワード]花き、ユキヤナギ、シモツケ、胚珠培養、種間雑種

[担当]群馬農技セ・生産技術部・生物工学グループ
[連絡先]電話 0270-62-1021
[区分]関東東海北陸農業・生物工学
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 群馬県ではユキヤナギは枝物として栽培されているが、耐寒性、耐暑性があり、生育も強いので庭木などにも利用されている。しかし、花色は白花のみで、ほとんど品種改良されていない。そこで、ユキヤナギに同属シモツケの赤色の花色を導入するために、胚珠培養による種間雑種作出を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. ♀ユキヤナギ×♂シモツケとの交配後5日以上の胚珠を1/2MS培地で培養すると発芽が認められる。交配後10日〜24日間で20%以上が発芽し、最大で15.1%の個体が生育する(表1)。
2. 生育個体は葉形、葉の先端部と基部の形態、気孔の大きさは花粉親であるシモツケと類似し、気孔の周辺細胞の形態はユキヤナギと類似している。また、生育個体のDNAをRAPD分析すると、花粉親と同じ増幅断片が得られ(図1)、この個体が両種の種間雑種であると確認できる。
3. 開花した種間雑種はいずれも同様な生育を示し、開花期は4〜5月である。花序はシモツケに類似し、前年枝の葉腋から伸びた短枝の先端に散房状に着生する。1花序当たりの花数が14〜22と多い(図2)。
4. 花弁の色は桃色で両親の中間花色を示す。桃色の発色は花弁の両側にあり、開花後も桃色を保つ(表2図2)。
5. 花弁の形はユキヤナギに類似し、広倒卵形である。萼片、花弁、雌ずいの数は5個である。雄ずいの数は24〜28個で、両親の中間を示す(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. シモツケ属の新しいタイプの花木の育種素材として利用できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:アジサイ類、ユキヤナギ類の胚・胚珠培養による種間雑種作出
予算区分:県単
研究期間:2000〜2003年度
研究担当者:飯塚正英、工藤暢宏、木村康夫
発表論文等:
1)飯塚ら (2001)園雑70(6):767-773
2)飯塚ら (2003)園雑72(4):347-351

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