微生物農薬を基軸としたイチゴ炭疽病、うどんこ病の防除体系


[要約]
親株定植後から本ぽ・開花期のイチゴ炭疽病及びうどんこ病防除において、タラロマイセス・フラバス水和剤と化学農薬を交互に、または2回おきに散布する防除体系は、化学農薬のみの散布と防除効果は同等で、化学農薬(殺菌剤)の散布回数を1/3〜1/2削減できる。

[キーワード]イチゴ、タラロマイセス・フラバス水和剤、炭疽病、うどんこ病

[担当]栃木農試・環境技術部・病理昆虫研究室、生物工学部・応用生物研究室
[連絡先]電話 028-665-7149
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  タラロマイセス・フラバス水和剤は、イチゴ炭疽病とうどんこ病を防除対象とした微生物農薬であるが、「予防効果を主体とする微生物農薬」という特性が理解されていないことから、十分な防除効果が得られない事例が見られる。
 そこで、イチゴの重要病害である炭疽病、うどんこ病を対象に、本剤を主とした親株床〜開花期の防除体系モデルを設定、実証することで、イチゴに対する化学農薬の散布回数削減を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 親株床〜本ぽ・開花期に、発病前からタラロマイセス・フラバス水和剤を化学農薬と交互に(防除体系 I)、または2回おきに散布する(防除体系 II)。これらの防除体系では、本剤を用いることで化学農薬(殺菌剤)の散布回数を慣行防除(化学農薬 II)より1/3〜1/2削減できる(表1)。
2. 育苗期での本剤の使用は、炭疽病の発生を著しく抑制し、化学農薬のみの散布区に比べて防除効果は同等かやや優る(図1)。
3. 本ぽでの本剤の使用は、うどんこ病の発生を著しく抑制し、化学農薬のみの散布区に比べて防除効果は同等である(図2)。
4. 本剤を使用する防除体系では、イチゴ植物体からTalaromyces flavusが分離され、化学農薬散布後も本菌のイチゴへの定着を確認できる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. タラロマイセス・フラバス水和剤の防除効果は予防効果が主体であるので、発病前から散布を始める。
2. 本剤の散布は、T.flavusがイチゴ植物体に十分定着するよう、濡れ時間が確保しやすい夕刻に行い、夜間は多湿条件を保つ。
3. 本剤は水和剤であるため、収穫期に散布すると果実が汚れるおそれがあるので、開花期までの使用とする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:生物農薬を利用したイチゴ炭疽病、うどんこ病防除体系の確立
予算区分:県単
研究期間:2002年度
研究担当者:野沢英之、石川成寿

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