チューリップ微斑モザイク病発病株を効率的に除去するための病徴指標


[要約]
チューリップ微斑モザイク病発病株の指標となる花の病徴やその発病時期は、品種によって異なる。また、葉に生じる退緑斑は、品種によっては花の病徴よりも有力な指標となる。品種ごとの病徴を把握することで適切な時期に発病株除去作業が可能となる。

[キーワード]チューリップ、微斑モザイク病、病徴、発病時期

[担当]富山農技セ・野菜花き試験場・花き課
[連絡先]電話 0763-32-2259
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  チューリップ微斑モザイク病は土壌伝染することから、ウイルス保毒球根を植付けることにより新たに圃場が汚染される。このため、発病株の抜き取りは本病の伝染経路を遮断する上で最も重要な防除手段である。ところが、チューリップには多様な花型・花色があり本病の病徴は品種によって大きく異なるため発病株の判別が難しい。そこで、品種ごとの病徴特性を整理し、発病株抜き取りの指標を作成する。

[成果の内容・特徴]
1. 花における主な病徴は、蕾着色期に生じる退色斑と開花後に生じる花弁内外の増色斑であるが(図1)、品種によって一方のみ生じる品種と両方生じる品種がある(表1)。よって、品種ごとに重点的に発病株の抜き取りを行う時期や、対象となる病徴型が異なる。
2. 葉の病徴は開花前には軽微であるが、茎葉黄化期には明瞭な楕円形の退緑(ときに紫色を伴う)斑紋(図1)や早期枯れ上がり症状が認められる。花より葉に多く発病する品種があり、特に花に病徴が現れない白・黄色品種では葉の病徴は有力な指標となる(図2)。本症状は開花後25日頃からみられ、40日を過ぎると健全株の枯れ上がりとの差異が不明瞭になる。
3. 以上から、発病株除去作業は各品種の病徴特性に応じて蕾着色期(蕾・葉)、開花後(花弁・葉)、茎葉黄化期(葉)の3期において重点的に実施する(図3)。
4. 273品種について、花や葉の病徴タイプを整理するとともに画像をデータベース化している。

[成果の活用面・留意点]
1. 品種の病徴特性に応じた発病株抜き取りの指針となる。
2. 蕾の退色斑は開花後には不明瞭になるため、蕾にのみ病徴が生じる品種は開花前に重点的に抜き取りを行う。一方、増色斑を生じる品種では、十分に開花させて発病株抜き取りを行った後に摘花する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:土壌伝染性ウイルスの生物的制御技術の開発
予算区分:指定試験
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:多賀由美子、森井 環、守川俊幸

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