国産飼料を給与して生産した牛乳に対する消費者の価格受容範囲


[要約]
国産の自給飼料を給与して生産した牛乳を想定し、三重県内の畜産交流施設を訪れた牛乳消費者の価格受容範囲を推定したところ203〜241円/Lで、妥当価格は226円/Lとなった。また鮮度や製造方法などの質的要因を重視する消費者に限れば、257円/L程度の価格で販売できる可能性がある。

[キーワード]飼料作物、牛乳、国産自給飼料、価格感度測定法、マーケティング

[担当]三重科技セ・農研部・経営植物工学グループ
[連絡先]電話0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 BSEや口蹄疫など輸入飼料に対する消費者の不安を招く事態が発生するなか、安心な国産飼料による畜産物生産への消費者ニーズが高まりつつある。そこで、全ての飼料を国産自給飼料を給与して生産した牛乳を想定し、この製品に対する消費者の価格ニーズを明らかにすることにより、今後の消費者要求に対応した畜産製品開発のための基礎資料とする。分析データは、牛乳消費者として三重県内の畜産交流施設の訪問者599名に対してアンケート調査を実施し、得られた213の有効回答データを用いた。

[成果の内容・特徴]
1. 価格感度測定法により「国産自給飼料を給与して生産した牛乳」の受容価格帯を推定したところ、203〜241円/Lとなる。また、受容価格帯のうち消費者が高いとも安いとも思わない妥当価格は226円/Lとなる(図1)。なお、普段購入している牛乳では174〜202円/Lの受容価格範囲で、妥当価格は189円となる。
2. 牛乳購入時に重要視する要因の比較では、「鮮度」を最も重要視し、次に「エサの種類」、「殺菌方法」、「価格」を同程度で重視している(図2)。
3. 牛乳購入時に重要視する要因の重要度についてクラスター分析により消費者を3分類し、各クラスターごとに「国産自給飼料を給与して生産した牛乳」に対する受容価格帯を推定すると、クラスター1は品質・製造方法などの質的要因重視派で国産飼料による牛乳の受容価格範囲は220〜275円と最も高値で幅は55円と広い。構成割合は13.5%と少ない。クラスター2は低価格重視派で構成割合は52%を占める。価格受容範囲は196〜228円と低く幅も32円と狭い。クラスター3は比較的ブランドを重視するが平均的なクラスターで、価格受容範囲は207〜251円となる(表1)。
4. クラスターごとに価格のポイントは異なることから、「国産自給飼料を給与して生産した牛乳」の製品の企画をする場合に、品質等の質的要因に関心の高いクラスター1(質的要因重視派)を中心にマーケティングを行えば、257円程度を妥当価格として販売できる可能性がある。

[成果の活用面・留意点]
1. この結果は三重県内の畜産交流施設の訪問者を牛乳消費者として算出している。しかし、他地域でも安全志向の消費者要求に対応した畜産製品開発の際に参考にできる。
2. 本調査の評価対象製品は、与えるすべての飼料を国産飼料で生産した牛乳としが、回答者には国産飼料の安全性などについての情報は何も与えていない。このため、既存の牛乳より高い受容価格となったのは飼料の安心に対する価値と考えられる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:飼料イネの生産・給与技術のシステム化と地域営農モデルの策定
予算区分:地域基幹
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:糀谷 斉、山本泰也、乾 清人

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