紫色を持つハクサイ型生食用新野菜における色等の評価


[要約]
地域特産品直売所の顧客を対象にコンジョイント分析を用いて紫色を持つハクサイ型生食新野菜の色等の評価を明らかにした。紫色程度の重要度は25.90で他の比較要素である価格30.32に次ぐもので、外観形状、産地、紫色素効用の説明より高い値であった。

[キーワード]野菜、製品開発、色、外観、コンジョイント分析

[担当]三重科技セ・農業研究部・経営植物工学グループ
[連絡先]電話0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 地域活性化では、新しい特産品を開発することが重要な課題であり、近年は機能性を有する色素等に着目した製品開発が話題となっている。しかし、野菜等では現実の色を客観的に表して分析した事例がほとんどなく、科学的な色の外観品質がマーケティング問題として取り上げられることは少なかった。そこで、紫色を持つ特産新野菜の開発を事例とし、色彩科学的な視点を加えたコンジョイント分析によって特産品モデルを検討する。

[成果の内容・特徴]
1. コンジョイント分析に用いた製品の要素(属性)と水準は、色3水準(緑の葉色を基本に浅紫、紫、濃紫とし、表1にマンセル表色系で色相、明度、彩度を表示)、形状2水準(ハクサイ系、ちぢみ葉系)、紫色素効用説明2水準(記載あり、なし)、産地3水準(Y村産、I地域産、国内産)、販売価格4水準(90円、120円、150円、180円)とした。
2. 各要素の水準を組み合わせた16種類のカードの選択順位から、各要素の重要度と野菜の価値を解析する(図1)。分析対象は当該野菜を販売する予定のY村温泉保養施設を訪れた顧客とし、カード選択はアンケート調査よりも購買行動に近い面接調査とする。
3. アンケートの有効回答者全平均の要素別重要度を見ると、価格が30.32と高いが、色も25.90あり、以下産地19.91、形16.09、紫色素効用説明7.79である。クラスター分析によって、価格を最も重視した中で色評価を行う価格重視型(42%)、形、産地、色などバランス評価を行う総合評価型(35%)、色を最も重視した中で産地や価格を考慮する色重視型(23%)の3タイプに顧客を類型化できる(図2)。
4. 色は表1に示した緑紫(マンセル表色系の7GY 5/8〜7GY 6.5/9が多く、2RP 3/9を含む)が最も高い1.75の部分効用値を示した。産地ではI産地に比較してY村産の評価がやや高かったが、国内産では評価がかなり低い。部分効用値から、緑紫のハクサイ型をY村で生産し、価格を150円あるいは90円にする製品モデルの評価が高い(表2)。
5. 色表現は、マンセル表色系や日本園芸植物標準色票を用いたことで客観性が高まり、新野菜の育種選抜時における利用など汎用性のある活用ができる。

[成果の活用面・留意点]
1. 三重県Y村における分析事例であるが、直売所のある温泉保養施設は中京から関西に及ぶ範囲の顧客が訪れており、他地域の新野菜開発における色の重要性の参考にできる。
2. 色・形状などの外観品質をコンピューター画像で作り出してコンジョイント分析を行う枠組みについても、他の地域で活用できる。
3. 分析カードの野菜色は、ハクサイ系とちぢみ葉系野菜を照明等の撮影環境が等しい撮影セットの中で一定方向・距離からデジタルカメラで撮影し、これをコンピューター上で色合成、プリンター出力、日本園芸植物標準色票・マンセル表色系との対比を繰り返しながら、色彩科学的な視点から葉色を作成したものである。この色合成には、色彩科学に関する色体系の理解とコンピューター画像制作技術の習得が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:地域遺伝資源を活用した新野菜の育種による高機能性特産物の開発
予算区分:受託研究(先端技術を活用した農林水産研究高度化事業)
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:大泉賢吾、森利樹

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