参照光を同時に撮影する群落分光デジタルカメラ


[要約]
大豆や水稲群落の反射光と太陽光など参照光を同時に同一画面上に分光して撮影するデジタルカメラである。生育診断に有効な550nm,800nm,950nm3波長の分光反射率を面的情報として得ることができる。

[キーワード]ダイズ、イネ、分光反射率、カメラ、生育診断、センシング

[担当]中央農研・北陸水田利用部・作業技術研究室
[連絡先]電話025-526-3236
[区分]関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 大豆や水稲等の均質安定生産のためには、生体情報センシングによって生育状態を把握し、適時に適切な栽培管理を行うことが重要である。葉色や分光反射率は、植物体の窒素吸収量などと関係が深いことから、生育診断に用いられている。しかし、群落葉色計や市販の分光測定器は観測範囲を面ではなく点として計測しているため、地表など植物体以外が観測範囲に含まれると正確な生育センシングはできない。そこで、作物群落の生育状態を分光反射率から把握するために、群落の分光画像を取得し、撮影条件に応じて植物体の分光反射率情報を抽出できる面的センシング技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 群落分光デジタルカメラは、分光反射率を面的情報として画像取得するカメラである。照射光である太陽光を観測対象物の反射光と同時に参照光として取り組むことで、従来必要であった白色板による間接計測や照射光用センサなどを省略でき、同一画面上に分光された面的情報としてカメラ単独で静止画撮影することが可能である(図1)。
2. カメラ本体は、干渉フィルタや参照光ファイバなどの分光結像ユニットとデジタルカメラによる画像記録ユニットから構成されている(図2)。切替えつまみにて、観測波長550、800、950nm3波長を手動選択できる。観測視野は30°、撮影距離は約1〜10mである。参照光は光ファイバによって撮影条件に応じて採光方向を変えることができる。
3. 本カメラで撮影した画像には、中央に対象物、上に参照光スポットの領域があり、それぞれの画素には、入射光量をA/D変換した8bit値が記録されている(図3)。分光反射率は、この対象物の反射光と参照光の記録値から算出できる。対象物画像の領域サイズは最大約55万ピクセルである。画像には露出時間など撮影条件(Exif情報)が付記され、JPEG形式で1画像あたり最大約900KBでCFメモリカードに保存される。
4. 本カメラの分光反射率の計測精度は、他の分光測定器の測定値と比較すると2乗平均平方根誤差(RMSE)=3%以下で計測可能である(図4)。画像として面的に分光反射率情報を取得できるので、画像抽出によって、群落全体だけでなく土や葉など領域ごとの分光反射率を把握することが可能である(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 植物以外についても、面的に分光反射率を隔測することができる。
2. 分光反射率などの算出や画像抽出には、市販の画像処理ソフトウェアなどを用いる。
3. 他の可視域波長の干渉フィルタに交換可能である。ただし、予め感度などの較正試験をする必要がある。
4. (有)木村応用工芸にて市販されている。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:大豆等の生育情報センシング技術の開発
課題ID:03-11-06-01-05-04
予算区分:精密畑作
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:大嶺政朗、帖佐直、細川寿、木村昭彦(木村応用工芸)、柴田洋一(帯広畜産大学)
発表論文等:
1) 特許出願「分光画像取得装置及び分光画像取得方法」(特願2004-161869)

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