乳用牛のOPU-IVFにおけるFSH前処置は採取卵子数を増加させる


[要約]
経腟採卵(OPU)による卵子採取の効率性を向上させるため、FSH投与による卵胞径の増大を図った。その結果、均一な大きさの卵胞が画像上で確認され、採取卵子数が増える。また、OPU-IVF産子の育成牛にOPU-IVFを行い受胎例が得られ、改良を速めることができる。

[キーワード]OPU-IVF、ホルスタイン種牛、FSH、卵胞波、乳用牛

[担当]群馬畜試・生物工学グループ
[連絡先]電話027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 酪農家によっては高能力を有しながら、娘牛生産および過剰排卵誘起処理による胚生産が困難なホルスタイン種牛が飼養されている場合がある。これらの牛の優良遺伝子を有効活用する方法としてOPU-IVFが考えられる。これまでのOPU-IVFは発情周期の任意の時期の同一牛に1週間に1~2回の頻度で連続実施し体外受精胚を作出したが、酪農家で連続実施することは困難である。そこで、一回のOPUによって良質卵子を多数採取することを目的に、卵胞波の確認およびFSH投与を行った後にOPU-IVFを行う。また、牛群改良促進のため育成牛へのOPU-IVF利用の要望があり、13ヵ月齢の育成牛へのOPU-IVF実施の可能性についても検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 供試牛には、酪農家が飼養している13ヵ月齢~10才のホルスタイン種牛15頭を用いた。
2. 発情期を除く任意の時期にCIDRを膣内に挿入し8日間留置後、PG投与時に除去した。主席卵胞が存在せず多数の小卵胞の発現が期待できる発情後4日目にFSH10AUを皮下投与し、その約24時間後にOPUを実施した(図1)。
3. OPUには採卵針を取り付けたプローブ(コンベックス型7.5MHz)および超音波画像診断装置を用いた。採取した卵子の体外培養・体外受精には市販の培養液(エンブリオパック)およびそれぞれの酪農家が持ち込んだ凍結精液を用いた。
4. OPU実施時の卵巣所見は卵胞直径が約5~10mmになり、これまでの無処置区と比べ、均一な大きさの卵胞が画像上で確認された。
5. FSH処置区の平均採取卵子数は15.2±9.3個、胚盤胞期胚の平均発生胚数は3.5±3.6個(発生率26.5%)であり、無処置区の8.3±4.9個、0.7±1.2個(10.3%)にくらべ有意に高い成績(p<0.05)であった(表1)。
6. 牛群改良促進のため、育成牛へのOPU-IVF希望が多くなり、外陰部にプローブが挿入できる13ヵ月齢の育成牛(当試験場スーパーカウのOPU-IVF産子)を用いてFSH処置によるOPU-IVFを行った。その結果、採取卵子数7個、発生胚数1個(発生率14.3%)となり、発生胚の新鮮胚移植により受胎を確認した。

[成果の活用面・留意点]
1. 卵子採取数の少ない供卵牛への適用。
2. 育成牛への適用による改良促進。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:体外培養系における牛生殖機能細胞利用技術に関する研究
予算区分:県単
研究期間:2004~2008年度
研究担当者:小渕裕子

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