乳牛における血中3-メチルヒスチジン濃度の変動とケトーシスとの関連性


[要約]
ケトーシスを発症した乳牛では分娩2週間後における血中3-メチルヒスチジン濃度が有意に高く、体タンパク質の動員が正常牛よりも大きいことが認められた。このため、ケトーシスの病態改善には、タンパク質の補給が必要と推察される。

[キーワード]乳用牛、ケトーシス、代謝疾患、3-メチルヒスチジン、

[担当]静岡畜試・乳牛部
[連絡先]電話0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 乳牛のケトーシスは従来、エネルギー不足が主原因といわれてきた。しかし近年、タンパク質不足も関与して病態を悪化させることが示唆されている。そこで、ケトーシスにおけるタンパク質不足を明らかにするため、体タンパク質の動員を反映する血中3-メチルヒスチジンを測定項目に加え、ケトーシスを脂質およびタンパク質代謝の両面から解析する。

[成果の内容・特徴]
 ケトーシス群(5頭)と正常群(5頭)について、定期血液検査を実施した。なお、ケトーシスの診断基準は臨床異常(元気食欲の低下等)がみられ、乳汁中ケトン体(3-ヒドロキシ酪酸)200μmol/l以上と規定した。
1. ケトーシス群では分娩2週間前における血中総コレステロール(TCHO)、コレステロールエステル化酵素(LCAT)が有意に低く、分娩前からエネルギー不足によるコレステロール代謝の低下が認められた(図12)。
2. ケトーシス群では分娩2週間後における血中遊離脂肪酸(FFA)と3-メチルヒスチジンが有意に高く、体脂肪および体タンパク質の動員が正常群よりも大きいことが認められた。したがって、ケトーシスではエネルギーに加えてタンパク質も不足することが認められた(図34)。
3. ケトーシス群の初回発情日数は67±11日で、正常群の47±8日と比較して有意な遅延が認められた。このことから、ケトーシスではエネルギーおよびタンパク質の不足により、分娩後の繁殖機能回復が遅れることが示唆された。

[成果の活用面・留意点]
1. 乳牛のケトーシスの病態をより正確に解明できる。
 今回の成績から、ケト−シスでは分娩後、エネルギーに加えてタンパク質も不足することが認められた。これは、乳牛では低エネルギー時にはアミノ酸からの糖新生が活発化すること、また泌乳にともなって乳タンパク質合成量が増大することが原因と推察される。
2. ケトーシスの効果的な予防および治療プログラム作成の基礎データとなる。
3. ケトーシスによる酪農家の経営被害を低減できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:乳牛における血中3-メチルヒスチジン濃度を指標とした代謝病予防・治療法の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:赤松裕久、齋藤美英、芹澤正文、三宅晃次、大庭芳和

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